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電通総研内のクリエイティブシンクタンクによる連載「NEW CONCEPT採集」

昨日までは気がつかなかった「無」に、思いがけないチャンスが眠っているかもしれない─

誰にも借りられていない本、何もない砂漠、遺物となった過去のヒット商品……一見、誰にとっても価値のない「無用なモノ」たち。しかし、光の当て方によっては、誰も見たことのない輝きを放つ可能性もあります。

「無」だからこそ、面白い。「無」だからこそ、魅力的。そんな底知れぬパワーを持つ「無」の探し方、教えます。



少し昔の話になりますが、国際基督教大学の図書館でこんなフェアが開かれました。「誰も借りてくれない本フェア」。その名の通り、開館以降1度も借りられていない本が集められたそうです。この自虐的なネーミングも相まって、当時ニュースにまで取り上げられていました。

このフェアがなければ、注目されなかった本たち。面白いのは、1回でも借りられてしまっていたら対象にならなかったということ。0回だから光が当てられたのです。

サンダーパフォーマンスというものをご存じでしょうか。サンダーとは、木材や金属を磨くための電動工具で、金属に使用すると激しく火花が散ります。その特徴を利用し、エンターテインメントにできないかと考えられたのがサンダーパフォーマンスです。旭川鉄工青年会が、鉄工業界のイメージアップのために始めたそうです。数々の名曲にあわせて、ステージにいるパフォーマー(本職は鉄工技能士のみなさま)が、サンダーを使ってリズムよく豪快に火花を散らします。

サンダーに、エンターテインメントの価値はもともとありませんでした。正確には、サンダーに人々を楽しませるようなエンターテインメントの要素などあるはずがないと誰もが思っていたわけです。

どうやら、「無」の周辺にはチャンスが潜んでいる。そう思ってみると、世の中の見え方が少し変わるかもしれません。今回は「無のチャンス」の探し方を3つ紹介します。

1. 「無」となっている偏愛を探す

『仮面屋おもて』は、日本でおそらく唯一の「仮面の専門店」です。仮面は、もちろんみなさんご存じのあの顔につける仮面のことです。東京の曳舟にあるお店の1階では店長おすすめの仮面たちが出迎え、2階にはアート性の高い仮面が並んでいる。

私は日本でただ一つの仮面専門店であると聞いたときに、意外だなと思いました。おそらく誰でも知っているあの仮面。なのに、これまでに専門店がなかった。ありそうでなかった。つまり「無」だったわけです。店長ご自身がもともと舞台や映像作品に仮面を提供しているお仕事をされて、仮面アーティストの方々と触れ合っていくなかで、彼らの支援も含め、仮面文化をもっと広めていきたいと始めたそうです。

とてもパーソナルなところから生まれていると感じました。自分が本当に好きなものや、自分だけがこだわりぬいているものは、世の中から見たら実は「無」なのかもしれません。個人でも、企業でも。自分だけがやってきていることこそ、これまでに世の中になかったかもしれません。偏愛は、競合する者がいないので先駆けになることができるのです。

文=大山 徹 イラストレーション=尾黒ケンジ

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