現代・起亜自動車南陽研究所のエンジンNVHリサーチラボは、人工知能に“自動車から生じる騒音”を学習させ、故障部位を特定するシステムをつくった。精度も非常に高いという。研究所では、自動車の騒音問題にあかるい専門家10人あまりとAIの能力を比較する調査を行っているが、人間が8.6%の確率で故障を見抜いたのに対し、人工知能の精度は87.6%に達したという。
エンジンNVHリサーチラボの研究者たちは、これまでにエンジンから発生する830のサンプル音を収集。それらを部品および故障の種類によって、18タイプ、44つの詳細項目に再分類した。たとえば、「ピストン騒音」という大分類のなかには、「オイルリングノイズ」「ピストン摩擦音」などの詳細項目が含まれる。そして、特定箇所に故障が生じた際に発生する車両の音を人工知能に学習させ、似たような音が検知された場合に故障の種類を導き出すように設計した。
AI診断システムをエンジンにあてると、故障部分を瞬時に知ることができる。人工知能は、検出された音をベースに、故障した箇所や詳細を確率順で3つまで提示してくれるという。ターボチャージャー60%、変速機27%、バルブ系13%といった具合である。
研究所側は、システムをさらに拡張させれば、他メーカーの内燃車両、電気自動車、航空機、タンカー、列車などの分野にも応用できと説明している。
現在、現代・起亜自動車は、この音解析技術を国内、ドイツ、日本など各国で特許出願中とのこと。人工知能をベースにしたパワートレイン(エンジンで発生した回転エネルギーを効率よく駆動輪に伝えるための装置類の総称)診断技術が約88%の精度にいたっており、今年中に90%以上にまで精度を高め、来年には各整備センターで活用できるようしていく計画だとしている。
なお、フィンランド・ヘルシンキに拠点を構えるNoiseless Acousticsと、オランダ・アムステルダムに拠点を構えるOneWattも、音のパターンだけで機械の問題を把握するAIシステム「EARS(Embedded Acoustic Recognition Sensors)」を開発中だとしている。
これまで、画像診断AIを通じて不良品を検知するシステムが開発されてきたが、今後は音診断AIを使ったソリューションの普及もトレンドとなってきそうだ。