すぐに飽きる人と、遊び続ける人は、何が違うのか?
ふたつのタイプの違いは、データに顕著に現れると加藤氏は話す。
「こまめにアクセスする習慣がある人は継続する。一方で、一日に3時間遊び続けたものの、その後数日間アクセスしないような“気まぐれ”なタイプは離脱しやすい」
学生時代に親や先生から耳にタコができるほど言われた「習慣形成の大切さ」は、ゲームに関する態度にも共通する。こまめな行動の積み重ねが「習慣」を作るのだ。
コロプラに限らず、ゲーム会社はこの「習慣形成」を意識した様々な工夫をし、離脱を防ぐ仕組みをつくっている。10日連続でアクセスすると報酬がもらえる「ログインボーナス」、期限までに課題をクリアするとアイテムを獲得できる「デイリーミッション」などがその例だ。
一方、飽きっぽい人に典型的な「短期間に集中的に遊びすぎて離脱する」パターンに対応した対策もある。遊べる回数や時間に制限を設ける「スタミナ制」と呼ばれるものがそれだ。一定時間遊び続けた後に制限がかかり、時間が経つとスタミナが回復してまた遊べるようになる。そのため毎日こまめにアクセスする動機になる。コロプラでは「クイズRPG 魔法使いと黒猫のウィズ」などで採用されている工夫だという。
毎日こまめに続けて習慣化し、かといって飽きるほどやりすぎないこと。語学学習のように「反復と継続が習得のカギ」と言われる分野に生かせそうだ。
対戦ゲームは「バランスが命」
「対戦ゲームはバランスが命。特定のキャラクターばかりが強すぎて、遊び方に多様性がないゲームでは『緊張』が生まれない」(加藤氏)
対戦相手によって戦法や道具を工夫するから面白いし、接戦だからこそ緊張感が生まれる。それだけにゲームに新キャラクターを投入するときは、バランスが崩れないように注意を払うという。
例えばコロプラが提供する人気タイトルの「白猫テニス」。白猫プロジェクトに登場するキャラクターを使った対戦ゲームだ。キャラクターを設計する際には、勝率や使用率に加えて、ラケットやコート、技など、どの要素が強さに影響しているのかを把握するようにしている。
実は、白猫テニスの開発当初は、データにとらわれないキャラクター設計をしていた。だが、リリースからしばらく経って、使いやすさと性能から一部のキャラクターばかりが使用される状況が目立っていた。
そこで、データサイエンスグループがキャラクターの勝率・使用率をKPIとして設定。さらには、「使用キャラクター多様化」をスローガンに、キャラクターの企画段階から分析官が関わるように。結果的に、使用されるキャラクターの多様性は徐々に改善されていった。
しかし、それでもキャラクターの強さを完璧に調整することは難しいという。キャラクターやラケットの組み合わせは膨大であり、社内でのテストプレイですべてカバーすることが難しいためだ。こうした課題を踏まえ、今後はAIの活用を進めていく考え。「近い将来、ユーザーさまのプレイに近いテスト用のAIを作ることができれば、リリース前にキャラクターのバランスを調整しやすくなる」
簡単すぎても興味がわかないし、難しすぎると挫折してしまう。工夫次第でハードルを乗り越えられるかもしれない。勝てることも負けることもある。魅力的なゲームは、チャレンジ精神を刺激するバランスに優れている。
工夫次第で課題をクリアできるクリエイティブな余白を残すこと。考えたことが成果に結びついたという達成感を得られること。目の前に積まれた仕事も人気ゲーム観点で見直せば、ワクワクするものに変わるかもしれない。