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科学と医薬を担当。21世紀は生物学の世紀であると信じている

セラノス創業者 エリザベス・ホームズ (Photo by: David Orrell/CNBC/NBCU Photo Bank via Getty Images)

米医療ベンチャー、セラノスの創業者エリザベス・ホームズの起訴、そして同社に関する一連の衝撃的な事実を明らかにしてベストセラーとなったジョン・カレイルーの「Bad Blood」は、非上場のバイオテクノロジー企業の投資家たちに悪夢をもたらしかねないものだった。

だが、米国のヘルスケア関連のスタートアップが今年上半期に行った資金調達の状況から見れば、悪夢は現実にはなっていない。米調査会社ピッチブック(Pitchbook)によると、この分野のスタートアップ各社が上半期にベンチャーキャピタリストから調達した金額は、過去十年の同期で最多となる総額150億ドル(約1兆6680億円)だった。前年比では70%増を記録している。

また、関連企業が今年6月中に調達した金額はおよそ18億6000万ドル。前年同月比では3%減少したが、6月の調達額としては過去10年で3番目に多い金額だった(最多は2015年6月の21億ドル)。

今年上半期に資金を調達したスタートアップの数は、昨年同期の855社から779社に減少した。これは、投資家が検討の対象とする企業が減ったことで、1社当たりの投資額が増えたことを意味する。ベンチャーキャピタルによる投資は、デジタル・ヘルスのスタートアップが投資家らにもたらす興奮と、解消されない薬価に対する不安感にもかかわらず、バイオテクノロジー企業に集中したということだ。

今年上半期の最高額となる3億ドルを調達したのは、血液検査によるがんの早期発見を目指すグレイル(Grail、評価額は32億ドル)だった。2番目はコンピューター断層血管造影によって冠動脈疾患の診断を支援するハートフロー(Heartflow)の2億4000万ドル(評価額15億ドル)。

また、メッセンジャーRNAを使った創薬を目指すモデルナ・セラピューティクス(評価額70億ドル)は5億ドルを調達。同社はそのほか、製薬大手のメルクから1億2500万ドルを調達した。

一方、高額の評価を受けたヘルスケア分野のスタートアップに関連して起きた不運な出来事は、セラノス以外によるものもある。診療所内に設置したディスプレイに処方薬などの広告を表示するシステムを提供していたアウトカム・ヘルス(Outcome Health)は昨年6月、評価額55億ドルでおよそ5億1000万ドルを調達。だが、その後に投資家たちから詐欺で提訴された(すでに和解)。

フォーブスは同社株の80%を保有する創業者のリシ・シャー(Rishi Shah)の資産を資金調達時の評価額に基づき算出、昨年の長者番付に含めたが、現在はすでにリストから除外している。

そのほか、薬剤の浸透供給システムを開発、昨年8月に評価額41億ドルで6億1500万ドルを調達したインターシア・セラピューティクス(Intarcia Therapeutics)は、翌9月に米食品医薬品局(FDA)から糖尿病治療薬の承認申請を却下された。そのため、今年2月に人員削減や事業の一部停止などに追い込まれている。同社の場合はスキャンダルではないが、株式を保有する投資家にとって良いことでなかったのは同じだ。

ヘルスケア関連の市場に投資するベンチャーキャピタリストたちにフォーブスがこの夏お勧めするのは、休暇中に海辺で読む本にはセラノスについて書かれたカレイルーの新著を選び、取ってはいけない行動を明確にしておくことだ。

編集=木内涼子

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