発射を21分後に控え、ケネディ宇宙センターの指令室に入ったBiniokは、「息子を送り出す父親の気分だ」と語った。
AIロボット「CIMON(サイモン)」は、バスケットボールほどの大きさの球形のロボットで、ISSの中では、空気を噴射して無重力空間を自由に浮遊する。CIMONの開発を主導したのは航空機メーカーの「エアバス」だ。
CIMONは宇宙飛行士をアシストする初めての宇宙ロボットで、映画「2001年宇宙の旅」に登場するAIコンピュータ「HAL 9000」を彷彿とさせる。午前5時42分にファルコン9が無事打ち上げられると、約100名のエンジニアや科学者から大きな歓声が上がった。Binjokは打ち上げの光景が「美しすぎて鳥肌が立った」と述べた。
BinjokはIBMのエンジニアで、CIMONの頭脳部分の開発を担当した。CIMONにはIBMが開発したAIプラットフォーム「ワトソン(Watson)」が搭載されており、宇宙での実験を学習し、ナレッジを蓄積することができる。
CIMONは誰とでも会話できるように設計されているが、主に仕える「主人」が存在する。それは、ドイツ人宇宙飛行士のAlexander Gerstだ。Gerstはドイツ航空宇宙センターの代理で実験を行う。CIMONのハードウェアを開発したエアバスは、旅客機メーカーとして知られ、製造ラインにロボットを導入するために専門のエンジニアを大量に採用している。
エアバスの工場では、2016年頃から煩雑・危険な作業においてヒューマノイドロボットを導入している。CIMONの開発は同社のシニアシステムエンジニアのPhilip Schulienが、高額な宇宙での実験費用を抑えることを目的に2年前にスタートした。開発に当たっては、ドイツ航空宇宙センターが500万ユーロを拠出している。
Schulienによると、エアバスがNASAの科学者を雇って生体物質や人工物質の実験をISSで行う場合、実験材料を宇宙に運ぶだけで約10万ドルの費用が掛かるという。
「宇宙での実験では、地球では困難な発見をすることができるため、新型航空機の部品に使う素材を選ぶ上でとても役に立つ」とSchulienは話す。