過去2年で最大のIPOになると予想される「シャオミ」は、香港の株式市場に上場し61億ドルを調達する計画だ。また、フードデリバリーなどを手掛けるオンラインサービス企業「美団点評(Meituan-Dianping)」も年内での香港市場への上場を申請しており、600億ドル(約6兆7500億円)の時価総額を目指しているとされる。
IPOを控えた企業の中で最大の案件になると予想されるのが、アリババ傘下の金融会社「アント・ファイナンシャル」だ。同社のIPO時期は、早ければ来年になると予想されている。同社が6月に実施した資金調達ラウンドでの評価額は1500億ドルに達したが、アナリストの一部からはこのバリュエーションを正当化することは困難だという声も出ている。
香港証券取引所はテック企業を招致するために上場基準を緩和し、創業者が強い支配権を維持することを可能にするデュアルクラス株式(議決権種類株式)を発行する企業の上場を解禁した。今後IPOを目指す中国テック企業は、この変更を好機と捉えている。
デュアルクラス株式は、米中の大手テック企業の多くが導入している。中国では、本国で急成長を遂げたテック企業が、海外進出を目指すために多額の資金を必要とするケースが増えている。例えば、ヨーロッパに進出したシャオミはアップルやサムスンとの熾烈な競争に直面している。
「アリババ以降、中国テック企業のIPOはそれほど盛んではなかった。しかし、最近になって多くの企業がIPOを計画しており、市場環境も整っている」と北京大学光華管理学院のPaul Gillis教授は話す。
米国との貿易摩擦が不安要素
しかし、市場のセンチメントは急に変わる可能性もある。IPOを目指す企業にとってリスク要因となり得るのが、ヒートアップする米中間の貿易摩擦だ。世界の金融市場では両国による関税の発動でボラティリティが高まっており、「プライスウォーターハウスクーパース」香港支社のBenson Wongは、「テクノロジー・セクターは今後さらに大きな影響を受ける可能性がある」と指摘する。
ブルームバーグによると、アジアを代表するビジネスリーダーである李嘉誠(Li Ka-shing)がシャオミに3000万ドルを出資する意思を表明したほか、テンセント創業者のポニー・マー(馬化騰)やアリババ創業者のジャック・マーも同社に出資予定だという。香港や中国本土で随一の富豪たちが出資を表明したことで、シャオミのIPOに対する懐疑的な見方は弱まることが予想される。