デジタル情報にとって「コピー」は宿命
情報処理を効率化するための決定的に有効な方法は、情報のコピーを作り出せるようにすることである。この点で、もちろんDNAは地球史上最大の創造であろう。文字も、さまざまな情報を、アルファベット26文字など標準化された要素の組み合わせに翻訳することで、コピーを容易に作れるようにしたものといえる。同様に、活版印刷や複式簿記も、情報をコピーする効率性を大きく高める発明であった。
そして、言うまでもなくデジタル技術は、情報をコピーする速度や量、正確性を飛躍的に高めるものである。このことは、「漫画村」(海賊版漫画ビューアサイト)の一件に象徴されるように、音楽や映像などさまざまな情報やソフトの不正コピーの問題にもつながっている。
もともとデジタル技術は「コピーを簡単に作れる」ことが特徴なのだから、同時に「コピーしてはいけないモノの不正コピーを防ぐ」というのは、なかなか容易ではない。そして、このような「コピーしてはいけないモノ」の典型が「マネー」である。
マネーの不正コピー、すなわち、偽札や二重譲渡が横行すれば、経済社会は大混乱になってしまう。そこで、現金以外の「デジタル化されたマネー」については、デジタル情報の管理を特定の主体に委ね、その主体の記録を唯一正しいものとみなす、という方法がとられている。例えばSuicaであれば、管理をJR東日本に委ね、その記録のみを正しいとみなすということだ。
これに対し、ブロックチェーンやDLTは、「全ての参加者が全ての取引記録を共有する(すなわち、帳簿を丸ごと全員分コピーしてしまう)ことで不正コピーを防ぐ」という、新しい発想を持ち込んだ。これは斬新な発想であるし、大規模コンピュータセンターを作らなくても、また、十分に信頼できる帳簿管理者がいない場合にもインフラを構築できるといった、さまざまなメリットがある。
しかし、ブロックチェーンやDLTには、本質的に不得意な分野がある。それは、取引量の増加に対応できるのかという「スケーラビリティ」の問題である。