このミルキィさ、夏限定 旨味が詰まった大福サイズの天然岩ガキ

鳥取県産の岩牡蠣「夏輝」

まるで岩のようにゴツゴツした大きな殻に収まる岩牡蠣、「夏輝(なつき)」。その豊満な身は、私の手のひらを覆ってしまいそうなほどの大きさ。大福のように丸々として、瑞々しいつやを放ちながらプルプル揺れている。

ひと口では絶対に無理。レモンを落として乳白色の体をかじると「ん〜!」しか出ない。とろりとして口いっぱいに広がるやわらかな甘さとうま味、深いコク。そして鼻から抜けてくる爽やかな海の香り……。これが、海のミルク。

今の時期に牡蠣? と思われた方もいるのではないでしょうか。私も牡蠣と言えば寒くなるころの“カキフライ始めました”をイメージするくらい。私の好物の一つですが、それはハフハフと食べるなら、でした。

生牡蠣はいつも「ワーイ!海のミルク!」というテンションでかぶりついては、真顔で「はて、海のミルクとは」と考え出してしまう。実は生牡蠣からミルク感を見出せたことはありませんでした。私の中にある、ほんのり甘く優しく舌を覆うあのミルクとは遠い気がしていたのです。

牡蠣がおいしいのは冬じゃない?

暑い日が多くなった頃、連載していた漫画「海めし物語」で岩牡蠣の取材となりました。

そこで漁協の方に教えてもらったウンチクですが、牡蠣は冬の食べものというイメージは、「冬は鍋物などで牡蠣の需要が増すため、たくさん生産され出回るから」なのだそう。牡蠣のおいしさのピークは産卵期の直前。牡蠣にミルキィさを感じるのはグリコーゲンという栄養分がたっぷりと含まれているからだそうで、これが産卵に備えてどんどん詰まっていくんですね。

牡蠣は大きく分けて真牡蠣と岩牡蠣の2種類あり、おいしさの旬も異なります。

真牡蠣は主に養殖で、日本で出回る牡蠣のほとんどがこちらで、おいしさの旬は3~5月。しかもこの時期は需要が低下するので、お値段も安くなるといいます。

一方の岩牡蠣は主に天然で漁獲量が非常に少なく、あまり流通しません。真牡蠣は1~3年で出荷できるのですが、岩牡蠣は4~5年もかかる。7~8月中旬のおいしい旬の時期にだけ出回ります。

鳥取県はそんな希少な岩牡蠣の名産地。山陰海岸は、大山をはじめとする中国山地から栄養豊かな水が注ぎ込むため、良質なプランクトンが生息する最高の環境が整っているそうです。そんな鳥取の海で育った天然の岩牡蠣が「夏輝」。品質が良く、ほとんどが産地で消費されなかなか出回らない逸品です。

いざ、「夏輝」とご対面。「ぎゃっ!」っとおったまげました。ぽっくり下駄のような殻に包まれた牡蠣の身の大きいこと!まるでベッドに寝そべるふくよかな裸婦。その豪快なビジュアルに若干の牡蠣不信は吹き飛びました。この牡蠣は幻想ではない、正真正銘のミルク感を体験させてくれる。



そう、私が幻想していた海のミルクは本当にあったのです!

でもそれは、産卵直前というタイミングだからこそ。もし夏に鳥取に行く機会があったら、鳥取砂丘に行くのと同じくらい、夏輝を食べることを忘れないでください。もしくは、お取り寄せというのも一つの手です。

文=高田サンコ

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