すでにキオスクを導入した店舗数は明らかにされていない。だが、ニューヨーク州内ではかなり多くの店舗で、すでにレジ係が姿を消しているようだ。マクドナルドが欧州で試験的にセルフオーダーキオスクの導入を開始した約1年前と比べて、現在の状況は大きく異なっている。
こうした変化は米国の場合、各州で実施された最低賃金の引き上げにも影響を受けているのだろうか?──そうとは言い難い。ファストフード店としてのマクドナルドは常に、早くて簡単であることを最重要視してきた。そして、セルフオーダーキオスクは利便性を高め、注文にかかる時間を短縮するものだ。
興味深いのは、米小売最大手のウォルマートが先ごろ、レジ係に代わる機械の導入を断念したということだ。同社にとって、この転換はうまく機能しなかったようだ。顧客にとっても、同社の営業利益にとっても、役に立たなかった。ただ、顧客満足度の低下には「貢献」した可能性がある。ウォルマートの顧客満足度は、レジの無人化を推進し始めて以降も依然として、過去最低の水準だ。営業利益率にもほぼ変化はない。
両社の違い
マクドナルドとウォルマートの間には、レジ無人化を実現するテクノロジー導入の効果に影響を及ぼし得るいくつかの違いがある。そうした差異が意味するのは、この技術はウォルマートよりもマクドナルドにとって、より良い影響を与える可能性が高いということだ。
違いの一つとして挙げられるのは、両社が顧客に提供する商品の幅だ。マクドナルドが扱う商品の種類はかなり限定的で、画一化されている。つまり、顧客がレジ係に代わるテクノロジーに慣れることに問題はないと考えられる。購入のために列に並ぶ時間も短縮されるだろう。
だが、ウォルマートはより幅広く、多種多様な商品を提供している。つまり、顧客が新しい技術に慣れるまでには時間がかかると見られる。顧客にとっては時間の節約ではなく、いら立ちにつながるだろう。
もう一つの大きな違いは、両社の顧客層だ。マクドナルドの顧客はどちらかといえば、ウォルマートの顧客より若い人が多い。そのため、新しいテクノロジーを受け入れやすく、早く順応することができると考えられる。
ウォルマートが失敗したこのテクノロジーの導入にマクドナルドが成功し、十分に活用することができれば、時給15ドル(約1640円)への引き上げを目指す闘いは今後、的外れなものにさえなるのかもしれない。一方で、すでに高いマクドナルドの営業利益率は、さらに上昇することになるだろう。