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2018.05.31

不動産投資成功への「合理的」発想とは

資産デザイン研究所社長、内藤忍。外資証券で鳴らしたシュールでドライな投資手法を不動産領域に持ち込み成功。その投資スタイルは、富裕層や一般投資家から圧倒的な支持を得ている。そんな気鋭のインベスターに訊く、成功するために必要な合理的な投資術とは。


住宅ローンと不動産投資

不動産市場が好況だ。しかし、個人投資家からは、「いまさらやって、どうなの?」「興味はあるけど、これから家賃相場が下がるのではないか」といった声も聞こえる。ここ数年にわたる低金利下で数少ない資産運用商品といえる不動産投資。考えすぎて行動しない、という投資家は意外に多い。決して多くはない情報収集をもとに、あと2年後には必ず相場が下がる、金利は上昇に転じ・・・などと結論付け、結局時間ばかり経ってしまうのだ。

元本を保証しない投資活動に踏み込むには高いハードルがある。とりわけ、不動産投資は、お金を借りる、そして基本的には長期投資、という2つの要素だ。多くの人は、借金をすることは悪いことだ、などとどうしても考えがちだが、そんな人に限って、マイホームの住宅ローンは平気で借りてしまう。それも額が大きい。であるにもかかわらず、不動産投資のローンは危ないと言うのだ。その思考に矛盾はないか。

不動産投資で借りるローンは、家賃で返済していくシステムである。一方で住宅ローンは、自分で働いて返していく。どちらのリスクが高いか。当然、後者だ。ある日急に事故や病気で仕事ができなくなることもあるからだ。まず呪縛を開放しよう。思い込みを払拭するには、何よりも正しい知識が必要である。

東京23区の活況は続く

不動産投資を始めるにあたり、まず欠かせないのは、地域特性を確かめるスタンスだろう。東京23区の活況は今後も続くと思われ、特に山手線の内側は魅力的だ。一方で、湾岸エリアのタワーマンションは明らかに供給過剰である。

都内の人気エリアは、時代とともに大きく変わってきた。昔は、田園調布や成城学園は憧れの高級住宅地だったが、実際には都心から遠く、生活していくうえで決して実利的とは言えない。現在は規制で高層マンションを建てることもできない。

最近は、清澄白河や北千住など、以前は城西エリアほどオシャレとは思われなかったエリアが人気を博している。友人らに高級住宅地に住んでいることを自慢することに重きを置くのでなく、通勤時間をどれくらい短縮できるかに価値を見いだす。かっこをつけて戸建てに住むよりも、アクセスのいい都心のマンションに住まい、浮いた時間を余暇に充てる。そんな合理的で自分流の人生設計を実現しようとする人が増えている。

不動産投資はインカムゲインであること

不動産投資のポイントは、“自分が住む場所”と“投資する場所”の捉え方にある。ふたつを一体化して取り組む必要はなく、地方に住んで東京の物件に投資することはありだ。

個人投資家のなかには、「東京には土地勘がないから」などと言って尻込みする人がいる。私はいくつかのワンルームマンションに投資しているが、実は1回も物件を見に行ったことがない。そもそも中古マンションには人が住んでいるので、室内を見ることはできないし、仮に詳しく見ることができたとしても、15分ほどの時間で、何を見極められることができるか。そんなことは気休めにしかならないだろう。あらかじめ入手できる情報だけで十分なのだ。



ここで、私の個人的な投資案件をお伝えしたい。まず海外物件は、先進国と新興国合わせて8か国に投資している。国内では東京の都心部を中心に区分所有物件と一棟ものを保有しており、民泊向けの宿泊物件(簡易宿所)も運営している。京都などに保有する一棟もの地方物件を含め、全部で約30室になるが、空室はゼロだ。しかも、家賃が上がり続けているものも多い。さらに、今月は1部屋を買い足した。来月も買う。それこそ、Tシャツのように買っている。

それらの資産価値も着実に上がっている。2011年に1ドル80円台の時、9万ドルで買ったフロリダの100㎡のコンドミニアムは、為替レートが円安に振れ、現地価格も約2倍の18万ドル程度まで上昇している。だが、投資の本来の狙いは、値上がり益(キャピタルゲイン)ではない。ローンと家賃の差額(インカムゲイン)を手に入れることだ。実際、私の年間家賃収入は数千万円規模まで膨らみ、本業と並ぶ収益源に育ってきている。

不動産投資のあり方は、投資物件から入ってくる家賃を、自分が住まう賃貸マンションの家賃に充てると腑に落ちる。構図はこうだ。

例えば、2億円のマンションが2つあったとする。家賃年間600万円、利回り3%と、家賃年間1,000万円、利回り5%。ここで考えるのは、後者に投資して得る家賃1,000万円を、自分の住まいとして契約した前者の家賃に充てれば、家賃600万円の高級マンションに住みながら、年間400万円が儲かるということだ。つまり、利回りの高いマンションは買い、利回りの低いマンションは借りて住むのである。

確かに、このビジネスモデルでは、投資の原資は不動産担保ローンで用立てるので、金融機関などからローンを借りられることが前提となる。だが、それさえクリアすれば、こんなに単純で合理的な投資活動はない。それをしないのはもったいないことだと思う。

正しい知識があれば、本質を見抜くことができる。リスクを恐れず、最初の1歩を踏み出そう。そうすれば、昨日、「いまさらやって、どうなの?」こう言っていたあなたは、自分が考えすぎていたことにきっと気づくはずだ。


内藤忍
株式会社資産デザイン研究所所長。住友信託銀行、シュローダー投信を経て、現マネックス証券創業に参画。個人向け投資商品企画・運営のマネックス・オルタナティブ・インベストメンツ、投資教育を提供するマネックス・ユニバーシティの両社長を歴任した後、クレディ・スイス証券では、プライベート・バンキング本部のディレクターに就任。2013年より現職。著書に「内藤忍の資産設計塾」シリーズ、「『好き』を極める仕事術」など多数。

edit by Hideyuki Kitajima | photograph by Setsuko Nishikawa

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