スパイシーなジョージア料理に舌鼓 日本から2時間の「週末海外」へ

ジョージア(旧グルジア)料理は日本では味わえないスパイシーな味覚



港に近いレンガ建築を改装したジョージアレストラン『サツィヴィ(Сациви)』

スパイスが決め手の
ジョージア料理

ではなぜ極東の町で、旧ソ連の南西のはずれのジョージア料理が味わえるのか。ロシア人にとって、ジョージアなどコーカサスの国々は、英国から見た南欧のように、温暖で食に恵まれた土地であり、おいしいものの宝庫と考えられてきたからで、ウラジオストクでもこの例外ではない。

また、ウラジオストクには、旧ソ連時代以降に送り込まれた中央アジア系移民が多く住んでおり、市内に20軒以上の中央アジア料理店がある。なかでもレンガ造りの洋館を改装したシックな内装が人気の「サツィヴィ(Сациви)」は、チキンにスパイシーなクルミソースをかけた名物ジョージア料理「サツィヴィ」から店名を取った店で、料理も雰囲気も地元で評判だ。

同店のシェフ、クヴェクヴェスキリ・マナナさんは次のように話す。


『サツィヴィ』のチーフシェフ、クヴェクヴェスキリ・マナナさん

「ジョージア料理は昔からロシアではポピュラーで、ウラジオストクでもレストランの数は増えている。ロシア中どこでもそうだが、ジョージア料理のレストランの厨房で働くのはジョージア人のシェフなので、どこで食べても家庭の味が楽しめる。ロシア人は基本的に辛い料理が苦手なので、辛さは少し控えめにしているが、ジョージア料理がロシア人に受け入れられた決め手は、スパイスではないかと思う」

ジョージア料理の定番スパイスといえば、バジルやコリアンダー、ディル、唐辛子、セロリ、パセリ、ローリエ、ミント、フェネグリークなどをブレンドしたミックススパイス「フメリ・スネリ」である。「これを使うと、どんな料理もジョージア風になる」とマナナさんはいう。

彼女のシェフとしてのキャリアは17年前からで、最初はサンクトペテルブルグのレストランで働き、その後モスクワを経て、昨年5月の「サツィヴィ」のオープンに合わせて3人のジョージア人スタッフとともにウラジオストクにやって来たという。いまのところ、「サツィヴィ」の客層は地元ロシア人が多く、外国人ツーリストはまだ少ないので、穴場といえそうだ。

「シルクロードの食の世界」を体験

ウラジオストクには、ジョージア料理以外にも中央アジア系のレストランがある。ウズベキスタン料理だ。羊肉のケバブや、ご当地風肉まんなどのウズベキスタン料理をメインとしたレストランチェーン『フローパク』は、モダンなイスラム風の内装で地元の若い人たちにも人気。すでに市内に3軒を数えるという。


ウズベキスタン料理店『フローパク』のバーカウンター。アルコールはOKらしい

コーカサスより東に位置し、しかもイスラム圏にあるウズベキスタン料理は、羊肉がメイン素材で、牛肉や豚肉を使うジョージア料理とは異なる。この町では数少ないハラル料理といえる。調理法も異なり、油を使って炒めるピラフやラグマンといった麺料理など、「シルクロードの食の世界」が楽しめる。

ウラジオストクは2泊3日で十分に歩きつくせる街。日本人が想像している以上に、現在の食のシーンは豊かで多様だ。ジョージア料理やウズベキスタン料理を味わいに、日本から2時間の週末旅行に出かけてみるのはいかがだろうか。

連載 : 国境は知っている! 〜ボーダーツーリストが見た北東アジアのリアル
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文=中村正人 写真=佐藤憲一

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