ICEYEの衛星は100キログラム以下の軽量なもので、マイクロ波センサを搭載したSAR衛星と呼ばれるタイプのものだ。SARレーダーを用いると、高解像度の2次元及び3次元イメージが生成可能だ。
SAR衛星が取得するデータは巨大なレーダーの役割を果たす。衛星の数を増やせば増やすほど、より解像度の高いイメージが取得可能になる。
また、天候に左右されずに詳細な情報が得られるため、石油やガスの採掘企業など、幅広い業界の関心を集めている。SARは光に依存しないため、夜間でもデータが収集できる。
2017年に発生したハリケーン・ハービーでは、ヒューストン近郊の洪水の被害を測定するためにSARが使用された。
ICEYEの設立は2012年。フィンランドのアールト大学の学生だった現CEOのRafal Modrzewskiと、Pekka Laurilaらが立ち上げた。2人は2018年のフォーブスの「30アンダー30」の欧州版に選ばれている。同社はこれまで累計5300万ドルの資金を調達しており、フィンランド政府やEUの支援も受けている。
2018年1月に最初の衛星を打ち上げたICEYEは、既にSAR衛星で取得した画像データの送信を開始している。
同社は現在、光学ターミナルを用いた通信関連企業「BridgeSat」とともに、通信容量の増強を進めている。BridgeSatは従来の無線ではなく、レーザーを用いた通信テクノロジーを開発している。ICEYEは顧客企業にデータ解析サービスも提供しており、調達資金でそのオペレーションも拡大する。
「欧州宇宙機関」にもデータ提供
衛星関連の分野では「SpaceX」や「Rocket Lab」らの参入が相次ぎ、衛星の打ち上げコストが下がり、競争環境は激化している。
調査企業「Forecast International」のアナリスト、Bill Ostroveは「この分野ではPlanetやBlackSky Global、Satellogic、UrtheCastなどの様々な企業がしのぎを削っている。また、中国当局が支援するJilinも存在感を増している」と述べた。
しかし、ほとんどの企業の衛星は従来の光学衛星であり、ICEYEのようなSAR衛星のスタートアップは稀な存在だ。そのため、ICEYEは「欧州宇宙機関(ESA)」や「Ursa」(同社はエネルギー開発企業にデータを提供している)などの大手と契約を結ぶことに成功した。
SAR衛星の開発コストは非常に高く、ICEYEの先行者メリットは大きいとOstroveは述べた。「ICEYEは今後、この分野で主要なポジションを占める企業の1社となるだろう」と彼は話した。