ビジネス

2018.05.19

落合陽一らが語る、シンギュラリティ時代の「介護」

木野瀬友人、落合陽一、下河原忠道の3名が「介護・ダイバーシティとテクノロジー融合」について話し合う。


高齢化問題と日本の労働力不足に対する解決策は「ロボティクス」と「視覚技術」

木野瀬:実際に当事者を巻き込んでやっているのが、下河原さんがやっている「認知症VR」ですね。

下河原:落合さんには「レビー小体病」の幻視を体験していただいたんですよね。正式名称は「レビー小体型認知症」。認知症の方の5人に1人くらいが該当するのではと言われているもので、我々には見えないものが見える「幻視」という症状があります。認知症に幻視という症状があるということを、ほとんどの方が知らないので、それをVRで体験できるようなコンテンツを作って、全国で展開しています。

実は「VRで認知症をやろう」と最初から考えて始めたわけではなく、「VRでビジネスをやりたい」が先でした。たまたま選んだコンテンツが認知症だっただけで、それが今どんどん広がりを見せている形です。



落合
陽一


落合:市場を探していた結果、一番フィットするところが社会問題だったというのは、すごく人類にとってポジティブですよね。社会問題の中で一番お金やサービスが動きやすく、かつテクノロジーを入れやすかったというのは、ハッピーなシナリオだなと思います。

僕は、高齢化問題と日本の労働力不足に対して、本質的な解決策は「ロボティクス」と「視覚技術」だと思っています。身体を運ばないといけない問題はロボットで、身体を運ばなくていいものであれば視聴覚+機械学習で解決する。

その2つの解決策を発展させるための、有用かつ実際にお金を落とすテストケースは、日本中に問題として存在するわけです。社会問題に対する解決策を追求していくと市場が開拓されるのは、非常に面白いシナリオだなと思います。

2060年に僕は70歳。そときにどんな時代になっているかは、これからの40年の自分の努力によって決まります。これは僕に限った話ではなく、今20代の人が、自分が高齢者になるまでに、この社会をどうデザインするかの話。40年あると、人間はいろいろなものが変わりますよ。


落合陽一
◎メディアアーティスト、博士(学際情報学/東京大学)。筑波大学准教授・学長補佐、筑波大学デジタルネイチャー推進戦略研究基盤基盤長。Pixie Dust Technologies, Inc. CEO。VRコンソーシアム理事。一般社団法人未踏理事。電通ISIDメディアアルケミスト。博報堂プロダクツフェロー。

下河原忠道◎1992年より父親の経営する鉄鋼会社に入社。1998年に単身渡米し、薄板鋼板の建築工法を学び、2000年シルバーウッドを設立。2005年に初めて高齢者向け住宅工事を受注したのを機に、高齢者向け住宅・施設の企画・開発事業を開始。2011年7月、千葉県にて、自らサ高住(サービス付き高齢者向け住宅)「銀木犀<鎌ヶ谷>」を開設。一般財団法人サービス付き高齢者向け住宅協会理事。

構成=筒井智子

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