検察が最高裁に上告するかどうかは明らかにされていないが、ある検察官は、当初の判決で定められた残り期間が短いことから、長い時間をかけて再度裁判で争う意味はないかもしれないとの考えを示している。
ベルルスコーニは約3000本の映画のテレビ放映権の獲得に絡み、複数のオフショア企業を使って脱税を働いたとして有罪判決を受けた。取得した放映権はその後、水増しした価格で関連会社に売却し、差額を着服したとされている。検察側は、意図的かつ重大な脱税事件だと非難していた。
一審判決では、ベルルスコーニには禁錮4年と多額の罰金が科せられたほか、被選挙権が停止された。だが、イタリア国民の大半は、それで元首相が実際に服役することになるとは考えていなかった。ベルルスコーニへの判決は実際、刑務所が過密状態だという理由で禁錮1年に減刑された。
2013年に下された控訴審判決は、一審の判決を支持。ベルルコーニに有罪を言い渡した。だが、被告の年齢(当時81歳)を理由に量刑を禁錮から社会奉仕に軽減。ベルルスコーニは再び服役を免れた。
先ごろ言い渡された判決は、ベルルスコーニが次の国政選挙で立候補することが可能になったことを意味する。もちろん、公職追放となっても自ら立ち上げた政党「フォルツァ・イタリア」を率い、積極的に活動してきた元首相が、政界での存在感を失ったことはほぼない。
ただ、今年3月に行われた総選挙では、フォルツァを含め単独で議席の過半数を獲得した政党はなかった。選挙後には有権者に人気のある政治家らが中心となって支持拡大に向けた活動を続けており、ベルルスコーニの復帰実現の可能性も出てきている。
一方、法的にも政治的にも敗北を喫してきたベルルスコーニは、金銭面で苦しんだことはない。「イル・カヴァリエーレ(騎士)」とも呼ばれる元首相は、今年のフォーブスの長者番付では190位に入っており、保有資産は推定およそ80億ドル(8777億円)に上る。