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2018.05.15 17:00

地方の人材危機解決へ ローカルとグローバルが連携する新ソーシャルビジネス


日本とは真逆の雇用課題を抱えるフィリピン

そこで大谷が考えたのが、フィリピンと手を組むことだった。大谷によれば、フィリピンは親日国家であり、公用語は英語、日本からの移動時間はたったの4時間で、日本との親和性は非常に高いという。フィリピンの平均年齢は23歳と日本の46歳の半分しかなく、労働生産人口が非常に高いのにもかかわらず、働き口が少なく、失業率は高い。

「CNE1があるサンマニュエル市の働き口は、ガソリンスタンドくらいしかないんです。街中は走り回る元気な子供で溢れているのに……。それを現地で目の当たりにして、『この子たちに日本で働いてもらいたい』と思ったんです」と大谷は言う。

また、大谷がフィリピンを選んだのにはもう一つ大きな理由がある。それは大谷のインフォプラント時代の部下である井坂浩章が、フィリピンで日本人向けの語学学校CNE1を経営していたこと。

CNE1は、もともと学校設立の夢を持っていた井坂とその仲間が共同で起業した学校である。そこで2017年夏、大谷は、フィリピンと日本を繋ぐときに、CNE1とコラボレーションができるのではないかと考えた。

4年半の間、フィリピンのCNE1でスタッフとして働き、現在は八戸学院グループ事務局に勤める松野知花はこう話す。

「私はフィリピンの家庭にホームステイしていました。フィリピン人の多くは大家族で暮らしています。でも仕事がない。その地域ではおよそ30%が失業状態なんです。その平均年齢は、20代の若者です。こんなに働ける人たちがたくさんいるのに、彼らには働き口がないんです。私は、この状態を解決して、ケアをしてくれたフィリピン人たちへの恩返しをしたいと思ったんです」


フィリピンの希望溢れる若者たちが日本の地方課題を解決する

大谷がプロジェクトの軸にしているのは、「教育」である。紹介される人材の事前教育と受け入れ企業の教育。この両方がないと、継続は難しい。教育に携わっている大谷だからこその、先を見越した考え方だ。従来の人材斡旋とは違い、教育体制が確立されていることがこのクラブの重要な存在意義といえる。

もう一つ、八戸学院グローバルクラブがクリアした大きな問題がある。ビザと労働環境の問題だ。

現在日本にいる外国人労働者の多くは、「技能実習ビザ」(外国人技能実習生)で滞在している。しかしこのビザは現状、最長5年しか滞在できない。また、ブラック企業で過剰な労働に従事させられるなどの問題があるのが実情。技能実習生制度は、労働人材不足の根本的な解決にはなっていないのである。

一方で、八戸学院グローバルクラブにおいては、こういった問題とも無縁といえる。IT分野では、外国人エンジニアは「高度人材ビザ」を取得でき、審査により更新できる。介護分野では、2017年9月から新たに運用が開始された「介護ビザ」を取得(日本の介護福祉士資格を有すれば取得可)すれば、継続的な更新が可能となっている。

八戸学院グローバルクラブを通じて来日したフィリピン人は、本人が望む限り日本で働き続けることができるのだ。

また、在日フィリピン人の日本での生活を守るため、受け入れ企業側のコンプライアンスも審査する。例えば、八戸学院グローバルクラブに入会するためには、企業は入会申込書に株主の構成すべてを書かなくてはならないのだ。
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取材・文=早田祥子

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