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フィリピン人の平均年齢は23歳。日本の46歳の半分だ。

日本各地で深刻化が続く人材危機。それを一度に解決してしまう大胆な取り組みが、過疎化が進行する地方都市、青森県八戸市から生まれようとしている。

将来、日本各地の老人ホームや訪問介護の現場で日本人とフィリピン人が共に働き、IT企業ではフィリピン人の若手エンジニアが活躍する──。日本の少子高齢化による労働人材不足が、そう遠くない未来、この“八戸モデル”で解決されるかもしれない。

このモデルを主導するのは、青森県八戸市にある学校法人光星学院が母体となる、株式会社八戸学院グループだ。八戸学院グループは、今年、「八戸学院グローバルクラブ」という企業向けの人材育成・人材紹介サービスを開始した。

八戸学院グローバルクラブに登録した介護企業やIT企業は、フィリピンの学校で人材募集をかけ、採用担当者は実際に現地を訪問し、面接など選考を行う。この時点では日本語がよく話せない学生が多い。

そこで、内定者に対して、八戸グローバルクラブが専門教育と日本語教育を施し、登録した日本企業に就職させる仕組みだ。

日本語教育は、八戸学院グループのパートナーであり、フィリピン政府の高等教育委員会認可校である語学学校、CNE1が担う。介護福祉士を目指す学生は、日本に留学し、八戸学院大学短期大学部介護福祉学科(学科設置申請中)の生徒となり、介護福祉士の資格を取得する。


日本企業の担当者がフィリピンに出向き、集団面接を行う。

「内定を出した日本企業が、CNE1での語学学校の費用や、寮、生活費と給与を保証し、短期大学の学費は一定条件で返済不要となる国の奨学制度を活用します。タダで学べて、タダで日本に留学できて、仕事を得られるんですよ」と、八戸学院大学元学長で、現・八戸学院グループ社長の大谷真樹は話す。

一方、八戸学院グローバルクラブは、受け入れ法人である日本企業に対しては、企業のグローバル化研修を提供する。具体的には、マンツーマンでの英語研修や、フィリピンでのオフショア開発拠点の提供等だ。日本企業とフィリピン人、双方にグローバル教育を施すことで、就職後のミスマッチを防ぎ、企業の成長にも結び付けるという。

ベンチャー起業からインキュベーター、そして学長へ

その中心となって動く大谷は、1996年にインターネットリサーチ会社「インフォプラント」を創業し、2006年にヤフーに売却(現在はマクロミルが買収)した経歴を持つ、起業家出身のビジネスマンだ。そんな彼が八戸市に関わることとなったきっかけは、遡ること2006年。

「インフォプラントのデータ処理バックオフィスを、たまたま出身地である八戸に移転したんです。そこで、八戸学院グループの卒業生を採用していたこともあって、地域や八戸学院とのつながりが生まれていきました」と大谷は語る。

インフォプラントを退職後、八戸学院から要請があり、2010年に八戸大(現八戸学院大学)総合研究所(インキュベーションセンター)の所長となった大谷は、そこで起業家を育て、これまでに31名が起業した。その時期から大谷の八戸創生への本格的な取り組みが始まることとなる。

大谷は2012年に八戸大学(現八戸学院大学)学長に就任。学生獲得の為に必要だったのは、他大学との差別化だった。

例えば、校名の統一や、女子に特化するなど大学の特徴を明確にした。ただし八戸市は、現在の23万人から2040年には17万人に人口減少し、消滅の危機にあるとまで言われている。ありていのやり方では労働人材不足は解決しないという不安を抱いていた大谷は、海外から八戸に人材を呼び寄せようと思い至った。

実際に、そのころ八戸の介護施設からは、「老人ホームは作ったが、働き手がいなくてオープンできない」。IT企業からは、「首都圏のIT人材不足問題は、結局、外注先の地方にしわ寄せが来ていて、地方でも人材不足が深刻」という悲鳴のような声が八戸学院にダイレクトに入って来ており、大谷の問題意識は高まる一方だったのだ。

取材・文=早田祥子

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