このグループには、グーグルの親会社であるアルファベットも含まれる。競合のアマゾンはインドのEC市場で32%のシェアを握っており、都市部を中心にユーザーの獲得を図っているが、今回の買収劇で影響を受けるのは必至だ。
ウォルマートが初めてインドへの参入を試みたのは15年以上前のことだ。その後、同社は2007年にインドのコングロマリット「Bharti」と共同でホールセール事業を展開したが、提携関係は長く続かなかった。調査会社「フォレスター」のアナリストのSatish Meenaによると、インドは外国からの直接投資を規制しているため、ウォルマートが米国と同様の小売チェーンを展開することはほぼ不可能だという。
米国市場が成熟し顧客数が頭打ちになる中、ウォルマートは今年初めに会員制量販店の「サムズクラブ(Sam’s Club)」の多くを閉店させた。同社は2016年以来、全米で150店舗を閉鎖している。また、成長が鈍化したブラジルや欧州では現地企業と経営統合を行った。こうした中、成長著しいインドは新規顧客を開拓する上で魅力的な市場だ。
「買収の決め手となったのは、ウォルマートが提示した買収プレミアムだ。同社は傘下の英国企業ASDAをセインズベリーに100億ドルで売却しており、その資金を充当することでフリップカートの経営権を取得することに成功した。同社が持つ商品調達力やサプライチェーンマネジメントのノウハウもフリップカートにとっては魅力的だった」とMeenaは話す。
フリップカートは食品強化の狙い
フリップカートは昨年、ソフトバンクやテンセント、マイクロソフト、イーベイなどから40億ドルを調達しており、パートナー選びでキャッシュ以上に重要なのはインドで独占的地位を強固にすることだった。
「フリップカートはスマホやファッション以外の分野を強化したいと考えている」とMeenaが指摘するように、同社はウォルマートと組むことで価格競争力をさらに強化することが可能だ。また、フリップカートにとっては未知の領域である食料品販売のノウハウを得ることもできる。
一方でジェフ・ベゾスは株主への年次レポートの中で、「展開初年度におけるプライム会員数の伸びは、インドがアマゾン史上最速だ」と述べ、インドで最も成長力の高いオンライン・マーケットプレイスはアマゾンであることを誇った。
「プライム会員は、他のプラットフォームと比べて消費金額も買上げ点数も多く、家庭にとって定番のリテーラーとなっている」とMeenaは言う。多くのユーザーは、オフラインで商品を購入する際にもアマゾンを使ってリサーチを行っている。