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2018.05.08

独フォルクスワーゲン、EVバッテリー向け投資の倍増を発表

AR Pictures / Shutterstock.com

独フォルクスワーゲン(VW)のヘルベルト・ディース最高経営責任者(CEO)は、電気自動車(EV)大手、米テスラの今後の見通しやビジョン・ステートメントに全く関心を持っていないようだ。

4月にCEOに就任したディースは5月3日、ベルリンで開催した年次株主総会で、世界中の自動車メーカーの中でも最も積極的にEV生産を推進していくため、バッテリーの生産者と480億ドル(約5兆2400億円)規模の契約を締結したと発表した。

テスラのイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)はその前日に行った今年第1四半期(1~3月)の決算発表で、自社のキャッシュバーン(手元資金の減少)やEVの品質、生産スケジュールの変更などに関する質問を巡り、一部メディアへの回答を拒否するなどしたことで注目を集めていた。

前CEOとの違いを前面に

VWは3月、バッテリーの生産拡大に向けた新たな計画を発表していた。だが、今回ディースが示した投資額は、その2倍近くに当たる。これについては、前任のマティアス・ミュラーが目標達成に必要な投資について現実的ではなかったとの見方ができる一方、ディースが新CEOとして、まずはEV関連事業に多額の予算を充てたい意向であることを示したものと見ることもできる。就任前はVW乗用車ブランドを率いる立場にあったディースは、自社のEV技術を一般に広めることに最も注力してきた人物だ。

ディースによればVWは今後、2025年までにEVの年間販売台数を300万台まで引き上げることを目指す。特に、欧米市場より速いスピードでEVのためのインフラ整備が進む中国市場に力を入れる方針だ。「2020年までに25種類以上のモデルでEV、20種類以上のモデルでプラグインハイブリッド(PHV)車を提供する」という。

VWはディーゼル車の排ガス不正問題、「ディーゼルゲート」で修理費用や罰金など、総額300億ドル以上を支出することになった。だが、その後この問題への対応には大きな前進が見られている。それでも、アナリストらの大半は、同社の新たな戦略には一部に「謝罪」の意味合いが含まれると見ている。

環境団体や規制当局、環境志向の顧客、不満を抱いたVW車の所有者など、多くがソーシャルメディア上で批判を展開したことから、VWはここ3年ほどの間、広く悪評を買ってきた。欧米市場での同社のディーゼル車は販売台数が大幅に減少。ドイツでは、ディーゼル車は乗用車の販売台数の半数近くを占めていたものの、現在では全販売台数の3分の1程度となっている。

ディースは株主総会で、VWの企業文化の変化とその新たな時代についても語った。「VWはより正直でオープンに、誠実にならなければいけない」として、将来の不正行為を防止することは、「自身にとっても経営陣にとっても最優先事項だ」と述べた。

また、「私たちは、反対意見を抑え付けることなくそれに報いようとするオープンな企業文化の価値をあまりに長く過小評価してきた」との見方を示した。

編集=木内涼子

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