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2018.05.07 17:00

トランプ大統領は米朝首脳会談で「ゴール」を決められない


北朝鮮はイラン核合意を「反面教師」に

トランプ政権は、イランを信用しない前提で結ばれた核合意であるにもかかわらず、「イランを信用できない」とイチャモンをつけている。1.イランに未来永劫、核エネルギー開発を認めない2.IAEAの監視強化、ミサイル実験の即時中止3.イラン核合意を修正しなければ、制裁を再開する──と。

これらの要求と脅しの背景には、11月の中間選挙をにらみ、オバマ前政権の外交レガシー(遺産)の否定を重ねることで、政権への支持を維持したいという狙いがうかがえる。なぜなら、イランはトランプ政権がイチャモンをつけるような違反行為を何らしてないからだ。

トランプ大統領は、英独仏に対して、5月12日まで合意の修正案を回答するよう求めているが、欧州側は「ゴールポストを勝手に動かすようなマネはできない」(外交筋)との立場。フランスのマクロン大統領は、既存の核合意とは別にミサイル協議を行うことなどを提案している。

核合意後、イランの欧州への輸出は約10倍に、欧州からイランへの輸出は約6倍にそれぞれ増加しており、こうした現実は無視できない。イラン側もトランプ政権が合意を離脱すれば、直ちに「われわれも離脱する」(政府高官)と警告している。

トランプ政権のイランへの圧力は、北朝鮮と交渉する上で「効果的だ」との見方が一部にはある。しかし北朝鮮は、イラン核合意を「反面教師」にして、国際的な合意を一方的に破る米国には、後戻りできる範囲での譲歩にとどめるだろう。もしくは象徴的な合意をして実務協議の長期戦に持ち込み、トランプ大統領の1期目の任期が終わるのをじっと待つという「手」も考えているだろう。

「米国第一主義」を掲げて、環太平洋連携協定(TPP)やパリ条約から勝手に離脱した前科のあるトランプ大統領は、横綱相撲が求められる大一番で相手から信用されず、「ゴール」を決められない可能性がある。

連載:ニュースワイヤーの一本
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文=水本達也

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