トランプ大統領は、北朝鮮核問題を「解決する責務がある」と意欲満々。金正恩委員長も北東部・豊渓里(プンゲリ)の核実験場を廃棄して、米韓の専門家らに公開すると表明し、米朝間の順調な調整をうかがわせた。
史上初の対面は、早ければ5月中に行われる見通し。一方、トランプ大統領が、一連の対話ムードを雲散霧消しかねない「決断」を下す期限が、5月12日に迫っている。それは、2015年7月に成立したイラン核合意から米国が離脱するという選択だ。
イランは北朝鮮よりはるかに力が上
カナダ・トロントで4月22、23両日に開かれた先進7か国(G7)外相会合。日本のメディアは、北朝鮮への最大圧力を緩めないよう、各国に念押しする河野太郎外相の動向を報じていたが、欧米メディアは、イラン核合意からの離脱をほのめかす米国と、合意の継続を求める英仏独3か国との深刻な対立に焦点を当てた。
米英仏独の4か国、ロシア、中国とイランが結んだ核合意は、イランが核開発の規模を大幅に縮小する見返りに、欧米側が経済制裁を解除するという枠組みで、日米が現在、北朝鮮に求める非核化の条件に似ている。
ブッシュ元米大統領はかつて、イランと北朝鮮を「悪の枢軸」と呼んだが、両国の核開発をめぐる立場は大きく違う。イランは軍事力、経済力、技術力で北朝鮮と比べてはるかに上だ。
北朝鮮のように核爆弾保有までには至らなかったものの、核兵器不拡散条約(NPT)に基づき、「いかなる国も核を平和利用する権利を有する」を主張、核兵器の原料となり得る自国のウラン濃縮活動を正当化した。核を「持つ国」と「持たざる国」の不平等を鋭く突いたのである。
イラン核合意では、こうした点を踏まえ、核開発の大部分を凍結させて国際原子力機関(IAEA)の監視下に置いた上で、ウラン濃縮活動の一部などを認めた。また、一定の期間を置いた後にイランが核開発を再開することも容認した。
ある国が核エネルギーを利用する際、それを軍事に転用するかどうかを当該国との「信頼関係」に委ねて判断することはできない。このため欧米はイランに対し、同国の核をめぐる行動を客観的に判断するための十分な監視・査察体制を敷いた。つまりイランが核兵器開発に乗り出そうとしたら、可能な限りそれを早く察知・阻止するという方策だ。