ひとり呑みやひとりラーメンなどを筆頭に、「ひとり○○」という言葉が生まれるなど、今やひとりで何かするのは当たり前。むしろ、日本の生活環境はどんどん、ひとりで何かするのに最適化している。
その一方で、近年はオンラインサロンや音楽フェスなど、さまざまな領域で「コミュニティ」への注目が集まっている。インターネットやスマートフォンの浸透により、個人最適化が進んできたからこそ、人々はあらゆる場所で偶然のつながりを求め始めている。
ちなみに、みなさんは、こんなデータがあるのをご存知だろうか?
「49.4%」──。
これは週4日以上、ひとりで食事する人のうち、本当は誰かと一緒に食事したいと思っている人の割合だ。「みん食白書」によれば、実はひとりで食事する人の半数が、誰かと食事したいと思っている。
そんな、「みんなで食べる=みん食」の可能性に注目し、「食×コミュニティ」のサービスを展開するスタートアップがある。みん食コミュニティ「KitchHike」を手がける、キッチハイクだ。みんなでごはんを食べる「ごはん会(Pop-Up)」が毎月300近く開催され、無機質でルーティンワークになりがちな食事を、新たな繋がりが生まれる場所に変えていっている。
彼らはなぜ、「食×コミュニティ」に注目したのだろうか。また、「みん食」が生むコミュニティの可能性はどこにあるのか。共同創業者の山本雅也、藤崎祥見に聞いた。
どんな民族も、食を通して外界とつながっていた
──まずお二人がキッチハイクを創業した経緯は何だったのでしょうか?
山本:僕は新卒で博報堂DYメディアパートナーズに入社し、「出版社×IT」を軸に新規事業の立ち上げを行ったり、クライアントソリューション企画の提案を行ったりしていました。「世の中を楽しく良くしたい」という思いがあり、多岐にわたって広告、PR、セールスプロモーションを手がけている博報堂DYメディアパートナーズに入社しました。若いうちから、おもしろいプロジェクトにたくさん関わることができたのですが、、働いているうちに少しずつ違和感が募ってきて……。
──違和感ですか?
山本:広告によって打ち出すメッセージはどうしても一過性のものになってしまうな、と。例えば、「選挙へ行こう」「節電しよう」とメッセージを発信しても、瞬間的に心は動かされるかもしれないですが、身体は動かない。また、少し時間が経てば忘れ去られてしまう。
メッセージが社会をアップデートする時代は終わり、これから社会をアップデートしていくのは、圧倒的に「仕組み」だと思ったんです。野村総合研究所でエンジニアとして働いていた藤崎と出会ったのは、ちょうどそのタイミングでした。
共通の友人を介して知り合ったのですが、話してみたら、藤崎も「仕組み」が世界を変えると言うんです。出会ったその日に一緒にやろうと思えるほどに馬が合いました。経験してきたことはまったく違うのに見えている景色が同じだと感じ、一緒に起業することを決意しました。