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2018.04.27 10:00

実はみんなで食べたい願望が強い? 「食xコミュニティ」が生む新たな価値

(左)キッチハイク CTO/共同創業者 藤崎祥見、(右)キッチハイク COO/共同創業者 山本雅也


藤崎:自分の実家はお寺で、父親はお坊さんなのですが、子どもの頃から後を継ぐのが嫌で中学卒業と同時に実家を出ました。ただ、20歳になり成人になったタイミングで家業のことを知った上で今後の人生を決めようと思い、大学を休学して京都へお寺のことを学びに行きました。
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そのとき、お寺はまさにコミュニティだと気づいたんです。宗派の分化や統合はコミュニティそのものですし、その習熟や消滅はコミュニティのライフサイクルと言い換えることができます。最終的に、職業はエンジニアを選択したのですが、これもきっかけはオープンソースのコミュニティに出会ったからです。そうやってコミュニティ、仕組みの重要性を実感していた頃に、山本に出会いました。

──最初、「KitchHike」は料理を食べる人、つくる人のマッチングサイトとしてリリースされました。

山本:藤崎と出会い、サービスの構想を描き始めた頃、本当に食で人とつながることができるのか、自分の中にある仮説を検証するために旅に出たんです。世界各地の家におじゃまして、家庭料理をを食べながら現地の人と交流をしました。この経験を通して言語も、国籍も、価値観も異なる人とでもつながることができるとわかったんです。食を通じた交流は普遍的な仕組みとして現代に蘇らせるべきだと思いました。
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当初、「食のAirbnb」のように、旅先の家庭に食べに行く、旅行者を食卓に招くマッチングを軸にしていましたが、旅先での利用ではリピート率が悪く、一度使ったらおしまい。一期一会の濃い体験としては確かにおもしろいのですが、スタートアップ企業としてはなかなか成長できない状態が続いていました。

転機が訪れたのは、2016年の初春。ユーザーの数人が、自然と今のモデルに近い「日常×ご近所」のシーンでサービスを使い始めたのです。奇しくも、ちょうどその頃、国籍でユーザーや料理をカテゴライズすることに違和感を覚えていた時でした。「料理はもっと自由であっていいし、食に国境はない、国籍でラベリングするなんて時代錯誤だな」と思ったんです。

誰がどんな料理をつくってもいい、大切なのは、楽しく料理をふるまって、食で人を幸せにつなぐことだと思い、旅先から日常へ利用シーンを大幅に変更しました。いわゆるピポッドですね。日常のコミュニティモデルにシフトしたことで、より本質に近づけたと考えています。

──なぜ、コミュニティだったのでしょうか?

山本:創業当時に読んだ文化人類学の本に、あらゆる民族は自分のテリトリーに他の民族が侵入した際、彼らを招いて一緒にご飯を食べる慣習をもっていると書いてありました。

「食」の目的は栄養の摂取だと思われがちですが、人と人をつなげるという機能が備わっていることは本当にすごいんです。なんとかこれを現代に取り戻そうと思いました。

食事であれば、言葉が通じない相手ともつながることができる

──いまの話はまさにその一例だと思いますが、コミュニティの形成にあたって、「食」の強みはどこにあるのでしょうか。最近はあらゆる領域で「コミュニティ」が注目されていますが、「食」独自の特徴を教えてください。

山本:誰とでもつながれる、というのはまさにその通りで、食事にはロジックが必要ありません。「美味しいね」「うん」と頷きあうだけで絆がきます。テキストベースで交流するよりもはるかに敷居が低い。また、食事を通じて、相手が何者なのかを知らなくても共感できるんです。

これは裏を返せば、相手と距離を縮めすぎなくてもいいということ。行きつけのバーで全く知らない人と意気投合するというのは、そのいい例です。職業は知らないけれど仲良くできるような距離感って心地よいですよね。こうした息苦しくなさが、コミュニティには大事なのではないでしょうか。

──いまは外食でも大衆居酒屋やバーくらいにしか、そうした機能はありませんよね。ファストフードやラーメン屋では、隣の人に話しかけたら変人扱いされることもあります。

藤崎:人類の長い歴史を考えると、やはり孤食は不自然ですよね。現代では1人でごはんを食べることが当たり前になっています。昔は隣の家に醤油を借りに行くなど、困りごとがあったときに近所の人同士で解決する機会はありましたが、コンビニなどのおかげで大抵のトラブルを自分で解決できるようになり、そうした機会も減ってしまいました。



──確かにコンビニに行けば、ほとんどのことは解決できますし、また飲食店はひとり用の席が多い印象があります。

山本:孤食が孤食たる所以は、「プロセス」を共有できない点です。食事をシェアしたり、同じタイミングでコーヒーを飲み終えたりするなど、プロセスを共有した時に人と人の間につながりが生まれていきます。
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文=野口直希 写真=小田駿一

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