国連は2016年から2030年までの15年間に達成するためにSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)を採択し、その目標4には「質の高い教育をみんなに」を掲げています。
この採択よりも以前から、長年にわたって繰り広げられてきた国連と各国の取組みにより、開発途上地域の就学率は2015年に91%に達し、全世界で学校に通えていない子どもの数はほぼ半減しました。識字率も劇的に改善し、学校に通う女児の数は以前よりもはるかに多くなりました。これらは特筆すべき成果といえます。
しかし実は、人の手によって、これと逆行する動きが進められているのも事実です。紛争地域における、学校の軍事利用です。教育を学校から守る世界連合(GCPEA)の最新の報告によると、2013年~2017年の5年間で、29か国の学校で軍事利用がなされており、学校に通うことが出来ない子ども達が大勢でています。
学校の軍事利用の仕方は様々で、例えば、イラクの小学校の地下室は弾薬の倉庫として使われ、リビアの中学校のグラウンドは反政府勢力による射撃の練習場として使われています。
以前は戦争というと国と国が争うものでしたが、昨今では同じ国家の中で、政府軍と反体制派が衝突する内紛が急増しており、国が所有する軍事施設ではない場所を舞台に、ゲリラ戦が繰り広げられるようになったことが背景にあります。
学校の軍事利用によって、生徒や教師は攻撃に巻き込まれて死傷する危険性と隣り合わせの日々を送っています。いつ攻撃されるか分からない状況であるため、学校への入学率ならびに進学率は低下し、既に入学をしている生徒も、出席率が低下し中退に繋がるケースも増えています。また、出勤しない教師も出てきており、学校存続そのものが危うくなる学校もあるそうです。
私がUNICEFフィリピン事務所で働いていた時も、ミンダナオ島を舞台に、モロ・イスラム解放戦線などと政府との紛争が繰り広げられていました。生徒達は上述のような状況に怯えて登校できないだけでなく、ゲリラ部隊に加われば教育を受けられる、という謳い文句で、少年兵のリクルーティングが行われている有様でした。
昨年私はイエール大学のワールド・フェローというプログラムに参加していましたが、カメルーン人のフェローによれば、カメルーンでは、英語圏と仏語圏の対立が深刻化しており、越境して学校へ通おうとする子ども達が、拉致や攻撃をされ、もう1年以上学校に行けていない子ども達が100万人単位でいるそうです。こんなことが、許されていいのでしょうか。