米国の独立研究機関、健康影響研究所(HEI)が4月17日に発表した年次報告書によると、長期にわたって大気汚染の影響下で暮らしていたことが原因で死亡したと見られる人は2016年、約610万人に上ったと推計される。直接的な死因は主に、脳卒中、心臓発作、肺がん、その他の肺疾患とされている。
大気汚染による2016年の死者数が世界で最も多かったのは、インド(約161万人)と中国(約158万人)だった。だが、年齢調整死亡率(各国の年齢構成の違いを補正した人口10万人当たりの年間死亡者数)で見ると、状況は大きく異なって見える。
2016年に年齢調整死亡率が最も高かったのは、アフガニスタンだった。同国の大気汚染は実際のところ、反政府勢力の攻撃や空爆以上に、同国の人々の健康に害をもたらしている可能性があると指摘されている。
アフガニスタンの首都カブールでは、木やプラスチックを燃やすことによる発煙と渋滞した道路で自動車が出す鉛を含んだ排ガスにより、大気汚染が危機的な状況にまで悪化している。さらに、調理や暖房のために多くの人が固体燃料を使用する地方部でも、首都と同様に問題が深刻化している。
ただ、こうした問題はアフガニスタンだけに見られるものではなく、その他の貧しい国々でも同じだ。「大気汚染」と聞けばスモッグや工場、アジアの経済大国で起きる渋滞をイメージする人も多いだろう。だが、大気汚染の原因の多くは、地方で使用される単純なつくりのストーブや発電機だ。HEIによれば、世界人口の3分の1以上が、家庭での調理や暖房などが原因の大気汚染にさらされている。粒子状物質の含有量が、空気質ガイドラインで示される基準値の20倍以上に上る場所もあるという。
一方、世界的に人口が増加するなか、室内空気汚染の危険にさらされている人は減少を続けている。1990年にはおよそ36億人だったものの、24億人余りに減っているという。特にインドでは、配電網の近代化や調理に液化石油ガス(LPG)の使用を促すことなどにより、状況を大幅に改善している。
各国の2016年の年齢調整死亡率
先進国が大気質の改善に努める一方で、発展途上国の多くはそうした取り組みに大幅な遅れを取っている。その差は各国の死亡率に明確に示されている。
・アフガニスタン/406
・パキスタン/207
・インド/195
・ナイジェリア/150
・中国/117
・サウジアラビア/95
・ロシア/62
・ドイツ/22
・英国/21
・米国/21
・日本/13
・カナダ/12