ビジネス

2018.04.25

2018年は、日本にとって「シェアサイクル元年」になるか

(photographs courtesy of Mobike Japan)



写真提供:モバイク・ジャパン

シェアサイクル事業に収益性はあるのか?

──日本で投入されている車両は中国では旧型に属するものですが、理由はあるのでしょうか。中国の中古品が持ち込まれているのではと勘ぐる人もいたようですが。

木下:新品です(笑)。モバイクの車両はすべて耐久性を重視した作りになっていますが、その中でも特に頑強なクラシック2.9という車種を投入し、日本でのニーズを見計らっている状況です。

──モバイクの利用料金は30分120円に設定されています。この低価格では利益をあげることは難しいのでは?

木下:シェアサイクル事業は自転車や駐輪ポートなどの初期費用が大きいのですが、モバイクは自社生産体制を構築しており、自転車の調達コストを抑えることができます。また他社には駐輪ポートに停車用ラックを設置している例もありますが、モバイクはラックの費用もありません。適切な運用をすれば、自転車の投入コストなどの初期費用は数か月で回収できます(註:モバイク・ジャパンでは駐輪ポートを旗と地面にペンキで書いたラインで示す簡易な方式を採用している)。

──シェアサイクル事業ですが、中国ではビッグデータの収集がマネタイズの一手段になると報じられています。利用料での収益化は困難でも、個人データ、モビリティデータを収集すれば、AI時代のデータエコノミーにおいては大きな資産になるとの分析です。

木下:先ほど述べたとおり、ユーザーからお支払いいただく利用料金で運営は可能です。中国でもモバイクがビッグデータ、個人データを一般的に販売しているという事実はありません。また個人情報の扱いについても、各国の法律を遵守しています。

室山:LINEとしても、シェアサイクルで得られたビッグデータによるマネタイズは考えていません。あくまで利用料金でマネタイズするモデルです。人がどのように移動したかというモビリティデータに関していえば、統計データとして価値があります。例えば、飲食店出店時や宅地開発の際に活用することは可能です。ただ、現時点で具体的に日本においてモバイクのサービスを通じて収集したデータの活用については未定です。

木下:中国ではシェアサイクルの普及に伴い、駅近の概念が徒歩10分から自転車で10分に変わり、地価にも影響を与えたという話もあります。

競争が始まった日本のシェアサイクル、勝ち抜く企業とは

──競合他社の動きも活発ですが、モバイク・ジャパンの優位性はどこにあるのでしょうか。

室山:競合が増えることによってシェアサイクルの認知が上がるのであればむしろプラスです。他社と比べた場合ですが、前述したとおりLINEの持つタッチポイントとモバイクの優れたオペレーションが優位点です。消費者にどのようにしてシェアサイクルのメリットをお伝えし、実際に体験してもらうかが勝負。シェアサイクル元年にロケットスタートを決めたいと考えています。

木下:可能なかぎり最大限のスピードで展開していきたいと考えています。モバイクは世界に数億人のユーザーを持つ国際的なサービスですので、東京五輪を控えた日本では外国人観光客の利用が見込める点も強みです。

中国シェアサイクル業界はすさまじい激変を続けてきた。モバイクの創業は2015年1月。冒頭のとおり、4月4日に美団点評に買収されたが、その評価額は34億ドルと推定されている。わずか3年あまりで中国全土に800万台もの自転車を投下し、急激な成長を続けてきた。中国でシェアサイクルを使った経験があるものならば、誰もがその利便性は認めるところだろう。

日本ではこうした利便性を実現しつつ、社会に受け入れられるローカライズを図る必要がある。中国のような乗り捨て自由の方式は困難なため、いかに駐輪ポートを確保するかがカギとなりそうだ。

文=高口康太 写真=モバイクジャパン提供

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