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2018.04.25 07:00

2018年は、日本にとって「シェアサイクル元年」になるか

(photographs courtesy of Mobike Japan)

首都圏を中心にシェアサイクル事業を展開するハローサイクリングは3月、ヤフー子会社のZコーポレーションに第三者割当増資を行うと発表。ヤフーIDの活用など新サービスによって事業の拡大を急ぐ。また同じく3月にはメルカリグループが手がけるメルチャリが福岡でローンチしたほか、中国シェアサイクル二強の一角を占めるofoが和歌山市で事業を開始した。

そしてもう一つの中国二強、モバイクは昨年、先陣を切る形で日本に参入している。8月に札幌でローンチ(現在は休止中)。12月には福岡でサービスを開始した。3月には神奈川県大磯町、奈良市と中国人客が多い観光地2か所でサービスをスタートしている。

中国発のイノベーションとして注目されているシェアサイクルはエコで健康的、かつ既存の公共交通機関ではカバーできなかった地域のアクセスを改善するサービスとして注目を集めているが、その一方で自転車の不法投棄や歩道占拠など社会秩序を乱すと懸念されている。また事業の収益性について疑問も残る。中小事業者の撤退が相次ぎ、モバイクとofoの二強も先行投資フェイズから抜け出せずに利益をあげる見通しは立っていない。

単体での事業継続は困難とも見られるなか、4月4日にはレストラン口コミサイト、フードデリバリーの美団点評がモバイクの買収を発表した。

華々しい成長の影で苦闘する中国のシェアサイクル。果たして日本には根づくことができるのだろうか。

3月30日、モバイク・ジャパン株式会社ゼネラルマネージャーの木下昇(以下、木下)。LINE株式会社事業戦略室室長、モバイク・ジャパン株式会社取締役の室山真一郎(以下、室山)の両氏に話を聞いた。

「現地の理解と速度の両立」 事業展開の見通し

──シェアサイクルはカバーする地域が増えれば増えるほど利便性が高まるサービスです。モバイク・ジャパンは3月に奈良市、神奈川県大磯町での事業を開始しましたが、今後の展開予定は決まっているのでしょうか。

室山:現時点ではまだ具体的にお話できないのですが、複数の大型自治体や企業等と交渉を進めています。サービス展開のスピードはきわめて重要ですが、現地自治体の意向を無視して自転車を先にばらまくようなやり方では成長にはつながりません。中国ではシェアサイクル業界は30社前後が乱立する混戦になりましたが、(ばらまき型の)投入がわざわいしてほとんどが淘汰されました。現地の理解を得ることを大前提に、最大限の速度でサービスを展開していきます。

──自治体の理解を得ることは難しいのでしょうか。木下さんは以前、「モバイクを導入すると中国人観光客がやってきて治安悪化につながるのでは」と現地サイドから懸念を示されたこともあったと発言していました。

木下:一部からはそういった懸念も言われていました。実際にサービスを開始した札幌では住宅地でサービスを展開したのですが、駐輪ポート以外に乗り捨てる違反は中国人利用者にはありませんでした。

室山:公共交通網という言い方がありますが、シェアサイクルは公共交通網の網目を面で塗りつぶすことができるサービスです。地元にとっても(既存の公共交通を)補完するメリットは大きい。

──利用できる都市を増やすだけではなく、駐輪ポートを増やすことも課題です。

木下:例えば、住宅系デベロッパーと提携して、マンションや団地の敷地に駐輪ポートを作る交渉を進めております。個人の軒先に近い場所にポートができることになります。ただポート設置の許可はデベロッパーだけではなく、住民の方の同意も必要です。住民総会は通常、年に一度ですからそのタイミングにあわせて順次導入してまいります。

──昨年12月にLINE株式会社はモバイク・ジャパンに出資しました。提携はどこまで進んでいるのでしょうか。

室山:LINEのアプリからモバイクが使えるようになります。すでに開発は進んでおり、今年前半にもリリースできる予定です。日本に多くのユーザーを抱えるラインから利用できるようにすることで、タッチポイント(消費者との接点)を増やせるのが強みとなります。ただし、単なるユーザー獲得競争を繰り広げるつもりはありません。それではどれだけ広告を打つかなどといった資金力勝負になってしまいます。しっかりとしたオペレーションができなければ、サービスは消えるだけでしょう。シェアサイクル事業ですが、自転車というハードを作ることは簡単ですが、その裏側の見えない部分にあるオペレーションがより重要です。この面から信頼できる相手としてモバイクを提携相手に選びました。
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文=高口康太 写真=モバイクジャパン提供

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