4. 問題解決
この分野で最も過大評価されていたのは「良い判断ができる人だとして周囲から信頼されている」の項目だ。リーダーは決断を下す際、自分が正しいと考えていることが多く、他者に意見を聞いてアイデアを集めたりしない。
トーマス・エジソンは2332個の特許を持っていたが、こうした発明を実現したのは彼が抱えていた14人ほどのエンジニア、機械工、物理学者などの「仲間」だった。チーム内で最も賢い人間になろうと考えず、チームの賢い人をつなぐ最高の橋渡し役になろう。
5. 関係構築
ほとんどのリーダーは、自分は周囲から好かれ信頼されていると思っているが、必ずしもそうとは限らない。リーダーは「職場の全メンバーから信頼されている」や「結果と周囲への思いやりを両立している」の項目で自己を過大評価しがちだった。
上下関係があるため、周囲はリーダーに好意的な反応を見せがちだが、現実として、そうした反応から想像されるほど好意を持たれていない可能性が高い。
6. 知識と専門性
自分の知識と専門性は過大評価しがちだが、人がどのような知識を持っているかは分からないため、他者からの評価は低くなりがちだ。
7. 協働
グループや組織との協力についても、人は自分のことを過大評価しがちだ。米国では、教育や仕事の場面のほとんどで、グループよりも個人の成果に重点が置かれているため難しい点でもある。
8. 周囲を鼓舞する
自分は他人が考えるよりもインスピレーションにあふれている、と考える人は多い。ゼンガー・フォークマンが世界中で集めたデータによると、周囲を鼓舞する力は最も価値の高い能力だが、実際の評価は最低レベルであり、習得が難しいスキルとなっている。
熱意を込めた、インスピレーションの感じられるスピーチをすれば他者を鼓舞できると考えている人が大半だが、ゼンガー・フォークマンの調査によると、リーダーは明確なビジョンや高い目標、人材の育成、主導力の発揮、感情的なつながりの構築を通して周囲にやる気を与えることができる。
ここまで読み、自分は思っているほど実は有能ではないかもしれないということに、リーダーが気づいてくれれば良いと思う。一方でデータからは、有能なリーダーほど自己評価が低くなりがちだと分かっている。リーダーの成長の鍵は謙虚さだ。自分には改善の余地があることを理解しているリーダーは、チームにフィードバックを求め、他者の強みを活用する方法を探す。
謙虚なリーダーが変革のモデルになるのも、こうした理由からだ。リーダーが修正を受け入れて前向きな変化を起こせば、周囲もそれに倣う可能性が高くなる。謙虚さをリーダーシップの重要要素とすれば、より早く素晴らしいリーダーになれるだろう。