ビジネスのパフォーマンスを最大化する「ご機嫌力」の正体

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ビジネスでもスポーツでも求められるものは目標達成、すなわち結果である。結果はもちろん多因子かつ他因子だが、その中でも最もコントロール可能な因子こそ、個人や組織・チームのパフォーマンスそのものだ。

さて、このパフォーマンスの構成要素は一体何なのか?そう問われれば、どう答えるだろう。スポーツの世界ではこうだ。パフォーマンスはたった2つの要素、つまり内容と質で構成されているのだと。

パフォーマンスとは、何を、どんな心の状態でやるのか。心の状態はあらゆる瞬間、すべての人のパフォーマンスの質を決定している。ところが、「何を」の部分、つまり内容や戦略には興味があるが、その「質」までを責任をもって揃えようとしている人は少ない。そのような考えのもとに生じるパフォーマンスレベルでは、スポーツの世界においては間違いなく勝てないだろう。

平昌オリンピックで、見事金メダルを獲得した羽生結弦選手も小平奈緒選手も、トレーニングの質を重んじて結果を手に入れている。ハッピープロジェクトなるスローガンで、箱根駅伝を4連覇した青学はなぜ強いのか、それはすべての人や選手に平等に与えられている時間とは別に、質の差で勝負しているからである。だからこそ、質を決定する心の状態を重んじているのだ。平昌で金メダルに輝いた上述の2名も、個別にスポーツ心理学のメンタルトレーナーをつけて心のトレーニングに熱心に取り組んでいると聞く。

これはスポーツだけでなく、ビジネスの世界でも同様のことが言える。結局は人の営みである以上、仕事にも質があり、心の状態が関与する。それにも関わらず、多くのビジネスシーンでは質はないがしろにされ「とにかく頑張る」だけ。日本のビジネス界は、量勝負でこれまで突っ走ってきてしまったのだ。

それでは当然パフォーマンスの質は低くなり、結果を得られないばかりか、イノベーションもクリエイティビティも育まれることはなく、時代の進歩についていけない企業が増え始めている。グーグルをはじめ世界のトップ企業が心を整えるためマインドフルネスのトレーニングなどを導入しているのは、そういうわけである。

スポーツドクターとして、様々なアスリートや企業の経営者・ビジネスマンのトレーニングをしている私は、パフォーマンスの質の高い状態を「機嫌がよい」と言語化し、現場にわかりやすく伝えている。アメリカの心理学者、ミハイ・チクセントミハイ博士が提唱する「フロー状態」を、もっと現場に即し日本流にアレンジした表現だ。
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文=辻 秀一

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