伝統的な市場調査はもはや信用できない、という問題だ。2016年の米大統領選の予測は大きく外れ、3Dテレビのようなイノベーションの需要については見当外れな判断がされ、英企業ロイヤルメールはひどいリブランドを行ってしまう、といった具合である。
いま、ロレアルやペプシコ、ユニリーバ、ボーダホンといった企業は、これまでの古い市場調査を行うことを避け、代わりにStreetbeesと呼ばれるスタートアップに任せようとしている。
Streetbeesは、アンケートや聞き取り調査を行う代わりに、世界中の100万の人々にお金を払い、われわれが日々行っていることをするように頼んでいる──つまり、彼らが日々使う製品やサービス、あるいは日常生活の習慣について写真や動画を撮ることを頼んでいるのだ。
「人々が自分の行動について考えていることは、彼らが実際に行うことと一致するわけではないからです」。Streetbees創業者のタグス・ブルトは『Forbes』にそう語る。
蜂たちとダイレクトにつながること
「リサーチとは、人々の生活のなかで実際に起きていることを見ることである、というのがわたしたちの原則です」とブルトは言う。
Streetbeesのアプリは誰もがダウンロードできる。そして、たとえばダイソン(これもブルトのクライアントだ)のようなブランドが、特定の国の「蜂」たちに対して、彼らの使う掃除機の写真をシェアしてもらうようリクエストすることができる。写真をシェアした蜂たちは、時間に応じて少なくともその国における最低賃金を受け取ることになる。
従来であれば、この種のリサーチをするためには膨大な時間とコストがかかった。リサーチャーを遠く離れた国に送らなければいけなかったからだ。しかしStreetbeesは、人々にダイレクトにアクセスすることで大幅なコスト削減に成功した。
ブルトはまた、選択式のアンケートを行うと、人々はしばしば自分をよく見せようとすると考えている。たとえば昨夜はどれくらい健康的な夕食をとったかと問われれば、人は事実を誇張してしまうかもしれない。それに対してブルトのチームは、人々が実際に行っていることを見ることができる。
ユニリーバはこのアイデアに賛同し、すでにStreetbeesとともに南アフリカでリサーチを始めている。そしてこのアプローチはいま、少しずつ広がり始めている。
世論調査のオルタナティブ
Streetbeesは、ヨーロッパを率いるVCファンド「Atomico」などから1200万ドルを調達している。
最近ニューヨークに新しくオフィスを構えたブルトは、資金調達によってStreetbeesの技術チームをより大きくすることができると語る。データサイエンティストや、機械学習・自然言語に特化したエンジニアを増やし、クライアントとなるブランドが顧客の日常生活に関するインサイトをよりリアルタイムで得ることができるようになるという。
またブルトは、消費財の領域を超えて、政治の分野に参入することも考えている。「世論調査が崩壊しているのは、既存の市場調査では人々に『何をしたか』を聞くからです」とブルトは説明する。「まだ初期段階ですが、わたしたちは真実を理解するために世論調査を越えたプロダクトを準備しているところです」
まだ始まったばかりとはいえ、世界中の100万の人々がStreetbeesを使って日々の生活を写真や動画としてシェアしていることを考えれば、このプラットフォームから政治の未来が生まれてくることもあるかもしれない。