働き方が多様化する昨今、会社員でいることのメリットとリスクとは?

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今の身の丈に合わないかもしれない「成長のための仕事」に参画することができる

上記の理由からも、会社はあなたのスキルをピカピカに磨き上げて一流タレントに成長させ、より利益をあげる存在になってもらいたいわけです。そのため、現時点では他の人に依頼したほうが短期的に結果を出せそうな仕事をあえて背伸びさせ、あなたに任せる、ということがあります。

試行錯誤を繰り返しながら、周囲の力を借り、ギリギリ達成できるかできないか。そんなプロジェクトやマネジメント経験、場合によっては会社が費用を大幅に負担しての海外出向や留学なども当てはまるでしょう。

こういったことはなかなか、フリーランスにはできません。取引先は、自社の利益の最大化のために必要な部分を外注することが目的で依頼をしています。当然、無理に外注先を育てる意味がありません。

依頼先にとって少し難しそうな案件や、いままでにやったことがなさそうな業務であれば、それが得意そうな会社に変更するまで。それでも自分自身を成長させるためになんとか身の丈より大きな仕事を得ようと思ったら、「それでもここに任せてみよう」と思われるようなプレゼンテーション力や、既存企業になさそうな新進気鋭のアイデアなど、いろんなものを駆使して案件を勝ち取るしかありません。

能力をアピールし、他に勝利してしっかりと認めてもらえないといけないという点は実は会社員でも同じことではあります。しかし、会社にとっての社員の成長が自社利益に直結するのに対して、企業にとっての外注先はそうではないので、当然、「いっちょ任せてみるか」というチャンスは会社員のほうが得やすいと言えると思います。

そういうわけで、会社員という立場が(うまくいくと)いかに素敵な側面があるのか、なんとなく伝わったかと思います。ここで、リスクについても書いていきたいと思います。

自分の強みを見誤って合わない仕事を合わない方法でやり続け、なりたくない分野のプロになってしまう恐れがある

先ほど、芸能事務所のタレントのように価値を発揮できると言いましたが、なかなか現実的には、誰もがそんなにうまく自分自身の(そして自社社員の)強みや最高の価値を正しく見定めることはできないでしょう。

私は金額などの交渉や営業が苦手と先述しましたが、採用されたのは営業職としてでした。学生時代に「営業が苦手」と自覚する機会はなかったですし、本当は企画職に憧れがあったけど、職種まで選り好みできる立場でもありませんでした。

その後、自分がつくってきたもの、現在も企画などの軸でいろんな仕事をできていることを考えると、あのまま営業として努力したからといって、一流の営業マンになれたとは思えません。そもそも、なりたいとも思っていませんでした。

それこそタレントさんも、どの路線でどう売り込むか、それ次第で結果が変わってくるのと同じで、せっかくの素材のどの部分をどう伸ばすか。それがある程度までは組織によって決められてしまうのは、チャンスでもある一方、リスクにもなりえます。

また、働き方についても言えます。数年、社会人をやってみて、自分が一番成果を出せる仕事の仕方は「適度に場所を変え、環境を変え、いろんな分野の人と話して発想を柔軟にしつつ取り組む」ことだと、いまではわかっています。しかし、入社した部署は朝から深夜までオフィスにいて、社外の人と会う時間も全くない状況でした。

周囲に気を遣ってなんとか合わせようと努力し、「先輩達がまだ帰っていないから帰れない」と顔色を伺いながら深夜に椅子に座り続けているのが苦痛すぎて、呼吸が苦しくなることすらありました。会社は人数も多いので柔軟な働き方にも限度がありますが、このあたりも、上司やチームの方針と自分の適性が合わないと仕事の効率が悪くなったり、心身を壊したりする恐れがあります。
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文=関口舞

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