ビジネスも試合も「怒ったら負け」 心の知能指数を上げる方法

fatmawati achmad zaenuri / shutterstock

ここに、怒りに満ちた上級役員がいたとする。彼を「ラルフ」と呼んでおこう。頭から湯気を立てるほど憤っている状態だ。部下の「ザック」が話せば話すほど、ラルフの怒りは増した。

ザックは会社のためにいくつかビデオを作成していた。ラルフは、2つ目のビデオの冒頭に、最初のビデオと同じ人物が登場してしゃべることが気にくわない。一方のザックはもちろん、このビデオシリーズに対するビジョンを持ち、会社がこれまで取ってきた保守的なアプローチを変えようとしていた。

ラルフは論理的に矛盾した2点を口にした。「長過ぎる、長過ぎる」と言う一方、「ビデオの最初にストック動画を入れなければいけない」と言い続けた。

ザックは自分のことを、感情的な人間だと思っており、それがもろ刃の剣だということも理解している。このときは必死になって禅のような穏やかさを保ちつつ、ラルフの怒りと理不尽さの嵐を受けても冷静さを失わないよう努めていた。

彼は落ち着いて「どうやったら、ストック動画を追加しつつもビデオを短くできるのでしょうか?」と聞いた。ラルフは怒りを爆発させ、両手を大きく振り上げる動作をして部屋を後にした。

結局、ザックは自分の考えに基づいてビデオを作り、ラルフの意見は全く考慮されなかった。ラルフはかんしゃくを起こした瞬間に、プロジェクトに前向きな変化を与える力を失ったのだ。

ちなみに、ザックは実在の人物だ。ラルフもそうだが、もちろん名前を変えてある。

人は怒ると愚かになる。私のある友人には、プロ格闘家の知り合いが多くいる。その全員が口をそろえて言うのが、「怒ったら負け」ということだ。

怒りは視野や判断力を狭め、賢い決断をする能力を著しく損なう。人は怒るとののしり、同じことを何度も繰り返す傾向があるのも、これが理由の一つだ。愚かになり過ぎて、わずかでも知性が必要なことは全くできなくなる。

私は過去に、米国の名門大学群「アイビーリーグ」出身で教養があり、天才とも言えるようなプロフェッショナルな人物が、怒りで顔を真っ赤にしてつばを飛ばしながら話す、無分別な愚か者になった瞬間を見たことがある。それは全て、かんしゃくを起こしたためだ。次のやりとりは、現実の経験に基づいて私が作った架空の会話例だ。

私:(上司の激怒から1時間後)ロサンゼルスオフィスの全員を本当に解雇すべきですか?

上司:え、私はそんなこと言ったか?
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編集=遠藤宗生

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