米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、世界全体で見た場合、同社の商品をオンラインで購入する顧客の3分の1が、店舗での受け取りを選んでいる。オンラインで注文した商品を指定の場所で受け取るこの「クリック&コレクト」サービスに大きな機会があると見るザラは、同サービスの効率向上と料金の引き下げを実現するため、ロボットを配置した店舗を増やしていきたい考えだ。
小売関係者向けのオンラインフォーラム「リテール・ワイヤー」の専門家パネル、ブレイン・トラストのメンバーの中にも、ザラのこの戦略には将来性があると見る人たちがいる。コンサルタント会社インサイダー・トレンドの幹部は、「クリック&コレクトサービスを導入している多くの店舗では、受け取りのための行列ができる… 実店舗で買い物をすることに比べ、それほど早くも便利でもない。店舗におけるサービスの自動化を目指し、ザラが取り組むべき課題だ」と話している。
本当に必要?
ただ、パネルのメンバーの間には、自動化に向けてのオプションとして、ロボットが最適かどうかは不明だとの見方もある。生鮮食料品店向けのソフトウェア・ソリューションを提供するストアパワーの社長は、「クリック&コレクトの運用コストを削減するための技術が必要であることは明らかだ」と指摘する一方、「最終的なソリューションとなるのは、ソフトウェアとハードウェア、カスタマイズされた自動化システムを組み合わせた受け取りサービスだろう。アマゾン・ロッカーの機能を強化したようなものだ」と語る。
さらに、ザラが実際にロボットを必要とする状況にあるかどうかについて、疑問視する向きもある。小売店向けのコミュニケーション・プラットフォームを開発するシアトロのマーケティング担当の幹部は、「商品の受け取りに時間がかかることが恒常的な問題なら、私ならまずは売り場とバックルームのスペースの配分を見直す」という。「店内のレイアウトの変更を検討することが先だ」というのだ。
コンテンツ・マーケティングのコンサルタント会社、VSNストラテジーズの社長は、「人気商品は一点ずつ梱包済みの状態で、工場から店舗に搬入するというのが賢明な考え方かもしれない」との考えだ。
激化する競争が業績を圧迫
ザラは一層激化する競争に直面している。百貨店J.C.ペニーや衣料品チェーン大手のギャップなどをはじめ、多くの小売店がサプライチェーンの効率化の促進に力を入れているためだ。ファストファッション・チェーンの中にはH&Mなど苦戦しているものもあるが、エイソス(ASOS)やツァランド(Zalando)などは、売上高を伸ばしている。
フォーブスが2月末に伝えたとおり、ザラは昨年12月~今年1月(第4四半期)の業績が当初の見通しを下回ったと見られている。これまで以上に、競争を優位に戦うことと事業の合理化の必要性を重視しているのだろう。
それでも、ロボットの導入が成果を挙げるかどうかは分からない。パネルのメンバーである小売コンサルタントWDパートナーズの幹部は、「大規模小売店なら納得がいく。だが、規模の小さな専門店ではどうだろうか?」と疑問を呈する。
「アマゾンは昨年、7万5000以上のロボットを導入した。これらが稼働しているのは、面積およそ4万6500万平方メートルの倉庫だ」