片山正通に聞く、アートの楽しみ方

左からワンダーウォール代表の片山正通、フィリップス日本代表・ディレクターの服部今日子、AKI ISHIZAKA代表取締役社長の石坂泰章

2017年9月、米ニューヨークにて、日本を代表するインテリアデザイナーであり、ワンダーウォール代表の片山正通が所有する70点におよぶ作品のオークション「Life is hard… Let’s go shopping.」が開催された。

日本人による、シングルオーナーセール(ひとりの所蔵コレクションを販売)が行われたのは、ニューヨークでは初。なかには3億円超の落札価格がついたものもあった。

大好評だったというこのセールを終え、あらためてコンテンポラリーアートとはなにか、作品を所有することはどんな意味を持っているのかを、片山正通と、今回のオークションを主催したフィリップス日本代表・ディレクターの服部今日子、元サザビーズ ジャパン代表取締役社長でアートアドバイザリーであるAKI ISHIZAKA代表の石坂泰章が振り返った。


洋服を買うような気持ちでアートを買う


ワンダーウォール代表の片山正通

石坂:片山さんのオフィスは非常にクリエイティブで楽しい空間ですね。ファインアートもあれば、初見の人にとってはよく意味が分からないものもあって、片山さんの自由な感性を感じさせます。クリエイティブなお仕事柄、この空間にあわせて作品を蒐集されたのでしょうか?

片山:いえ、空間よりも作品の方が先です。昔から気に入ったものはすぐ買いたくなるほうだったので、いつの間にか作品がすごく増えて、数百点とかになってしまって。最初は倉庫に預けていましたが、やっぱり常に眺めていたい気持ちがあり、それらを置く場としてこのオフィスを建てたんです。

服部:プライベートミュージアムですね。

片山:そんな大げさなものではないけれど、いちばん長い時間を過ごす場所なので心地よい空間にしたくて。ぼくはアートを、音楽やファッションと同軸で考えているんです。というのは、もともと音楽が大好きで、レコードのジャケットでロバート・ラウシェンバーグやアンディ・ウォーホルを知ったのがアートに触れるきっかけになった。だから洋服を買うのと同じようにアートを買う、って言ったらかっこつけすぎかな。まあ、値段は高いんですが(笑)。

ぼくにとってのアートは「美術」っていうのともちょっと違います。ぼくにとって作品を買うことは、アーティストの考え方を共有させてもらうという行為。そのカッティングエッジなコンセプトによって刺激されたり、励まされたりするので、アートはまるで友人のような存在です。

日本人で稀に見るシングルオーナーセールを開催


フィリップス日本代表・ディレクターの服部今日子

石坂:アートといえば、「観る」「買う」、そして「売る」というつきあい方がありますが、片山さんは昨年初めてコレクションを売りに出されたのでしたね。

服部:私が日本代表を務めるフィリップスの主催で、片山さんのシングルオーナーセールを昨年9月にニューヨークにて開催しました。日本の個人の方のお名前が冠についたシングルオーナーセールはフィリップスとしてはもちろん、他にも多くのオークションハウスがあるニューヨークでも初めてでした。

石坂:フィリップスはコンテンポラリーアートに特化したオークションハウスですね。

服部:石坂さんが代表を務めていらしたサザビーズジャパンや、クリスティーズのような大規模オークションハウスとは違って、扱う品は20世紀以降のモダンおよびコンテンポラリーアート、そしてデザインに主なフォーカスを絞っています。

片山さんのコレクションも同時代性のある作家中心でしたが、片山さんというフィルターを通すことで、その作品に新たな価値が見出されたのだと思います。ファインアートもあれば、そうでないものもあり、一種のセレクトショップのような楽しいものになりました。
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文=秋山 都 写真=小田駿一

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