石坂:片山さんは目利きですから。
片山:ぼくは売りたくなかったんですけどね(笑)。でも、せっかく売るならオークションを1つのプロジェクトと考え、70点を一堂に集めることでひとつの世界観を伝えることができればと思いました。
石坂:オークションの最中はどんなお気持ちでしたか?
片山:寂しいのとうれしいのと。そして自分の見つけたものに価値を見出して高く買ってもらえるという刺激的な興奮と。あっという間の1時間でした。
アートは経営者にどんな影響を与えるか
写真を見て即購入したというエイドリアン・ゲイニ―
石坂:こんなクリエイティブなオフィスにいると、どんどんアイデアも湧いてきそうですが。
片山:ぼくの好きなコンセプチュアルアートはその物理的な存在というより、背景にあるストーリーや哲学もひっくるめて魅力なんです。既成概念を打ち破ることを教えてくれる、先生のような存在ですね。素材自体を作品にしてしまうような転換力や、ある種の破壊力があったりして、本当に学ぶことは多いです。
服部:既存概念とは違ったパラダイムで考えるきっかけになるということですね。最近では20代~40代の若手経営者の方がコンテンポラリーアートを多く求めてくださっていますが、同じ効果をビジネスの世界でも期待されているように思います。
片山:ぼくやその方々にとって、アートは飾りじゃないんです。
石坂:それは名言ですね。ところで、片山さんはどこでアートをお買いになるんですか。
片山:ぼくはどこでも。アートフェアでもギャラリーでも、直感で買います。先日のオークションで売れたエイドリアン・ゲーニーなんて、海外から携帯に送られてきた写メで即決しました。ぼくはその時ゲーニーの名前も知らなかったけど、「これだ」と。
AKI ISHIZAKA代表取締役社長の石坂泰章
石坂:美術館にもよくいらっしゃるんですか?
片山:行きますよ。でも楽しさは違います。だって美術館にある作品は買えないから、刺激に欠ける(笑)。
服部:片山さんはいわゆる、アップ&カミングな作家がお好きですね。
片山:コンテンポラリーアートの面白さとして、作家が同じ時代を生きているということが挙げられると思います。作家がどのように進歩していくかを見るのも楽しいし、その作品を買うことで、作家や世界のコレクターたちともつながっていく面白さもあります。でも、魅力はそれだけじゃない。理屈ではない部分も大きいです。
石坂:エドワード・ホッパーの言葉で終わるなら、「言語と数字ですべてを語ることができるならアートは要らない」ですね。
片山正通◎インテリアデザイナー。株式会社ワンダーウォール代表。武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 教授
服部今日子◎フィリップス日本代表・ディレクター
石坂泰章◎アートアドバイザリー。元サザビーズ ジャパン代表取締役社長。AKI ISHIZAKA代表取締役社長。東京藝術大学非常勤講師