海外では、3月7日の香港の仮想通貨取引所バイナンスがクラッキングにあったとするニュースと、米国証券取引委員会(SEC)が「仮想通貨取引所はSECに登録する必要がある」という見解を示したという報道が伝わった。
バイナンスは素早い対応で不正取引を元に戻し、取引・預金・出金も再開、狼狽売りも多くは発生しなかったようだが、知名度の高い取引所だったことから市場への影響は残った。
また、SECの仮想通貨取引所への登録要請については、裏を返せば「現状のままトラブルが起きたとしてもSECは救いの手を差し伸べない」と宣言したようなものであり、アメリカでの仮想通貨ユーザー保護が進まないことへの不安感が高まる格好となった。
一方、日本国内では同じく3月7日、マウントゴックスの管財人・小林信明弁護士が2017年9月以降から3月上旬にかけて、破産財団の持つビットコイン及びビットコインキャッシュ約430億円相当の売却を明らかにしたという大きなニュースが伝わった。破産財団は、さらに2000億円相当の仮想通貨を管理しており、債権者への弁済のためこれらを放出することも検討と発表された。このニュースがビットコイン価格の重しとなった。
そして、ダメ押しのように3月8日には、金融庁が仮想通貨交換業者7社(FSHO、ビットステーション、テックビューロ(取引所「Zaif」運営業者)、GMOコイン、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジ、コインチェック)の行政処分を発表した。中でもFSHOとビットステーションの2社には1か月間の業務停止という厳しい措置を命じた。2社は登録申請中の「みなし業者」であり、ビットステーションは利用者から預かった仮想通貨を私的流用していたことが指摘され、再び取引所リスクが浮き彫りとなった。
3月12日には、仮想通貨NEM(ネム)の大量不正流出問題を引き起こした仮想通貨取引所コインチェックが顧客約26万人に約460億円の返金を開始というニュースが伝わった。これを受けて仮想通貨全体に安心感が広がる場面はみられたが、ネガティブなニュース連発による影響は大きく投資家心理を一気に好転させるには至らなかった。NEM流出時より2割減での返金には否定的な意見が根強かったことも影響した。
3月19日~20日にはアルゼンチン・ブエノスアイレスで財務相・中央銀行総裁会議(G20)が開催される。ここでは仮想通貨取引におけるマネーロンダリング(資金洗浄)対策について各国による体制強化を提案する方針が明らかとなっている。
現状、仮想通貨対策に関して各国の足並みは揃っておらず、今回の会合で仮想通貨に関する具体的な規制強化で合意に至ると予想する声は少ない。世界規模の統一した規制が必要であるとする声は依然として多いなか、足並みの取れない状況下、どのような規制強化へ向けての指針が発表されるか注目となろう。
仮想通貨取引所の監視などは、投資家やユーザーへ安心感を与える施策であり、市場の健全化と拡大を推進する側面がある。一方、規制強化に対するネガティブなイメージが強く、市場では売り材料としてとらわれがちとなっているのが現状だ。
長期的には、規制強化は健全な市場の形成につながるニュースとしてポジティブ視されてもいいと考えるが、なかなか市場の反応は難しい。足元の軟調なビットコインの動向は、こうした規制強化に対する動きとも考えられる。
連載:「仮想通貨」マーケット実況
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