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旅から読み解く「グローバルビジネスの矛盾と闘争」

MONO JAPANに3回連続で出展している「Tsunagu Sonogi Tea Farmers」。会場ではお茶の試飲も。

毎年2月にアムステルダムで開催され、“オランダの熱狂的な消費者”が集まるイベントがある。目利きによってキュレーションされた日本の選りすぐりのプロダクトが並ぶ展示即売会、MONO JAPANだ。

前半の記事では、他の欧州展示会とは異なるMONO JAPANの特徴や新規出展者を惹きつける魅力を紹介した。後編では、継続出展者の事例やMONO JAPAN主催者のビジョンが、どう日本のモノづくり産業や中小企業の未来の発展に繋がっていくかについて説明する。

「モノ」を変えずに魅力を伝えていく

過去3回のMONO JAPANに出展し続けている企業は2社、ともに継続出展をきっかけにそれぞれの海外展開の事業モデルを模索し、確立しつつあるようだ。

そのひとつが、兵庫県小野市を拠点に、地域のモノづくりと職人技の継承と伝播に焦点を当て、国内外で活動するデザイン会社、シーラカンス食堂。代表デザイナーの小林新也氏は昨年アムステルダムにも現地法人MUJUNを設立し、ポップアップショップやミュージアムショップでの展開を中心に、欧州展開を進めている。

今回のMONO JAPANでは、ハサミや包丁などの刃物、京都府との共同事業で進めている、伝統工芸品の欧州ミュージアムショップ用の商品展開など、多岐にわたる商品を展開。その傍らで会期中、約30組を相手に、刃物研ぎの体験ワークショップを実施した。

「刃物を研ぎに戻ってきてくれるお客さんも多かった。持参した砥石セットも完売。今回はリピーターも多く、顔見知りがどんどんと増えていく。本当に根付いている感がある」

3回目を経た小林氏は、MONO JAPAN主催側と共に作ってきたイベントの成果を感じながら、自信と確信に満ちた様子でそうコメントした。欧州においてはニッチな日用品である砥石が消費者に好評なのも、MONO JAPANならではの現象かもしれない。


刃物のワークショップを行うシーラカンス食堂の小林氏

現地法人名であり、自社レーベルの名前でもある「MUJUN」は、矛盾にインスパイアされたものだ。小林氏は、本連載のタイトルでもある「グローバルビジネスの矛盾と闘争」に、まさに日々向きあっているような経営者であり、デザイナーである。

同社は、MONO JAPANだけでなく、同じく2月開催のアンビエンテ(フランクフルトで行われる世界最大の消費財見本市)にも継続出展し、B2Bクライアントからの受注を受ける。大量消費・大量生産のスキームに基づく大型展示会に疑問を抱きつつ、MONO JAPANではB2Cに的を絞ってエンドユーザーに向き合うことで、新たなモノづくりにつなげている。市場ニーズに合わせて小手先のデザインを変えるのではなく、すでにあるモノの魅力を伝えることが重要で、欧州市場に向けたデザイン変更はしないことも多いという。

小林氏の最たる問題意識は、伝統産業の後継者不足問題である。海外販路開拓やマーケティングコミュニケーション面でテコ入れしたリブランディングで一定の成果を出したが、今後は、自らが後継者としてそのモノづくり担い手となるべく、自社のデザイン事務所の工場(こうば)への改築を進めている。

文=MAKI NAKATA 写真=MONO JAPAN / Studio Frog

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