ビジネス

2018.03.25 15:00

モノづくり中小企業の「サステナブルな海外展開」の未来とは


こうしたMONO JAPANの意義は、政策や国家予算とも関連する。経済産業省の補正予算には、日本のモノづくりや海外展開を支援する様々な事業が組み込まれている。

例えば、ものづくり・商業・サービス経営力向上⽀援事業に1000億円、小規模事業者支援パッケージ事業に120億円、グローバル企業展開・イノベーション促進事業に40.1億円などである。またクールジャパンファンドは、「和」の魅力を世界に伝える日本発ファッションブランドの海外事業に10億円、パリにおける日本各地の地域産品の欧州市場展開支援事業へ1億円の出資を行っている。

これらの予算に基づく各種補助金を活用した商品開発や海外展開は、MONO JAPAN出展者のような中小企業にとっても必要なスキームだ。モノづくりの背景にあるストーリーをしっかりと伝え、海外の文脈に根付かせるためには、中長期的な視野に基づいた投資が欠かせない。

一方、3回のMONO JAPANを経て、オランダのマーケットは確実に変化していると中條氏は分析する。「オランダ人はモノを買わないという定説を、3年という長くはない期間において、打ち破ることができたのではないかと思います」と事後の感想を残した。欧州市場に拠点に持ち、市場に対する理解がある中條氏だからこそ、双方向の対話の架け橋を作ることができたのだろう。

「デザイナーが次の社会へのビジョンを見せる牽引役を担っている」というオランダで、MONO JAPANには、2つの目標があるという。「一つは、日本のモノづくりに携わる企業や職人たちが、その技術を高めながら継続的に世界に貢献していくといった方向性を提示する場をつくること。もう一つは、日本や欧州のクリエイターをつなげることで、双方が学び新しいトレンドやマーケットが生まれることです」

筆者は、昨年開催時から出展者の一員として、またMONO JAPAN自体の事業計画立案に関する相談を受けるなどして、部分的ではあるが、内外の闘争と成功を目の当たりにする機会があった。また、今回のイベントも全日程に渡り参加した。

肌寒い2月のアムステルダム、ロイドホテルには日本と欧州各国からの様々なゲストが集まり、MONO JAPANという場を介した対話を重ねることで、計り知れない熱量が生まれていた。それは、“出展者と消費者”だけでなく、会場のロイドホテルに共に滞在しながら、昼夜顔を合わせる“出展者同士”での情熱的な対話でもあった。

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異国の地での対話と気づき、そして情熱の共有こそが、日本の「モノづくり」文化を基盤とした新しいビジネスが生まれ、継続していくために必要な要素なのかもしれない。

文=MAKI NAKATA 写真=MONO JAPAN / Studio Frog

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