もう一つの継続出展者は、長崎県のそのぎ茶生産者の若手6人が形成する「Tsunagu Sonogi Tea Farmers」だ。
チームを代表する大山良貴氏は、「人と人をつなぎ、心を和ませるお茶づくり」をコンセプトにお茶の栽培から製茶加工、仕上げまですべての工程を自社で行う大山製茶園の4代目。高品質な日本のお茶を欧州の日常に根付かせるべく、オランダ、スイスなどを中心に欧州市場でのワークショップを行う。MONO JAPANの参加をきっかけに、お茶専門の現地ディストリビューターとの出会いがあったという。
「実際の販路開拓、販売はディストリビューターに行ってもらうが、やはり生産者として現地の市場を分かっておきたい。自分たちでちゃんと現地市場の状況を把握しておくことで、海外へ売りたいという日本の顧客にもよりよい提案ができる」と大山氏は言う。
MONO JAPANでは、直接消費者に対してお茶を振る舞い、茶葉や急須を販売する一方で、即売会自体での経済合理性を追求せず、既存顧客や潜在顧客のさらなるビジネス展開を支援するための市場調査として、継続的な参加意義を見出しているようだ。
モノづくり欧州展開の「矛盾と闘争」の先
「産業革命以降は『モノを作る』ことに重きをおいて社会の成熟度を定義してきたけど、『文化を作る』というのが本来の人間の脳の役割だったはず。人工知能が普及するにつれて、そちらへの回帰が進んでいくと思う」 デジタルガレージの共同創業者でMITメディアラボ所長でもある伊藤穰一氏は、自社メディアのDG Lab Hausでの対談記事でこのような予測を立てる。
MONO JAPANは、「モノを作る」ということに単なる経済合理性ではなく、文化的意義を見出すことで、欧州において、日本のモノづくりを通じた新しい「文化を作る」ことに貢献している。モノづくりという文化を付加価値として欧州市場に根付かせ、そこで取り入れた新しい視点を再度日本に還元するという流れを作ることで、新しい流通の選択肢を提示する。その意味で、AIの発展も視野にいれた、未来の「モノづくり」の方向性を示しているのかもしれない。
「日本文化を欧州で浸透させることが最終目的ではありません」と、MONO JAPAN仕掛け人の中條永味子氏は言う。
欧州で、日本の良い製品、伝統技術などの価値を高め、高価でも多くの人が求める商品として流通することができる場をつくる、というのは一つの方向だ。一方でMONO JAPANは、欧州からヒントを得ることで日本企業の商品開発の経験値が上がり、日本のプロダクトが欧州市場でより身近になること、それにより市場が拡大することで、後継者不足などの社会問題を打開することも視野に入れている。