ついに有名企業も立ち上がった、アメリカの銃規制に変化

ドナルド・トランプ米大統領とウェイン・ラピエール全米ライフル協会(NRA)会長(Getty Images)

アメリカ・フロリダ州の高校で17人が犠牲となった2月14日の銃乱射事件を受け、アメリカ社会では、銃規制を求める世論がかつてないほど高まっている。CNNテレビによれば、国民の70%が銃規制強化を支持し、反対の27%を大きく上回った。

アメリカ政府の統計によると、国内に出回っている銃は約3億丁で、自殺を含めて年間3万人超が銃の犠牲となっている。それでも有効な銃規制強化が設けられない背景には、銃の販売業者や愛好家の集まりである全米ライフル協会(NRA)の政治的圧力と、国民の武器保持の権利を定めた憲法修正2条の存在がある。
 
トランプ大統領は、フロリダ州の乱射事件に関し、銃マニアだった容疑者への「監視が不十分だったことに問題がある」などと指摘。ホワイトハウスで事件の遺族や同級生と面会した際にも、「凶暴な卑怯者は、誰にも撃たれないから襲撃する」と主張し、教師を訓練して銃を持たせる考えを示した。この一見ばかげた学校教職員の武装化は、2012年にコネティカット州の小学校で児童ら26人が殺害された銃乱射事件後、NRAが提起した議論である。
 
筆者もアメリカ駐在中、銃の所持を当然の権利だと思っている人たちから似たような議論をふっかけられて、戸惑ったことがある。例えばこんな感じだ。

「なに、君の家には銃がないのか?」(支持者)
「日本では一般的に銃の所持は禁じられていますから」(筆者)
「では強盗が襲ってきたらどう対応する?」(支持者)
「警察に電話して……」(筆者)
「間に合わないだろう。私たちは自分の家を守る権利があるんだよ」(支持者)

アメリカ社会で銃を所持する権利は、ある意味、治安でさえも政府に依存せず自分たちで守る「自由」の象徴となっているというわけだ。
 
形式上は単なる市民団体にすぎないNRAの力の源泉は、こうした伝統的な原則に加えて、全米にいる公称500万人の会員と武器メーカーからの潤沢な援助にある。その底力は、今回の乱射事件を受けてNRAとの関係を断つと表明したデルタ航空に対し、本社のあるジョージア州の共和党が、ジェット燃料に対する州税免除の条項を法案から削除すると脅しをかけていることからもわかる。

NRAは日本円で億単位の巨額献金で小さな政府を求める共和党を支援。共和党議員がNRAを非難しようものなら、地元の有権者から放り出されることになる。
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文=水本達也

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