ビジネス

2018.02.23

日本が誇る小さな大企業「スモール・ジャイアンツ」大賞を決定!

山井太 スノーピーク代表取締役社長(右)と国見昭仁 電通ビジネスデザインスクエア エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター


──最終的な目的が「製品づくり」ではなく「人間」に向いているところに共感を覚えたと。

国見:そうですね。僕は、すべての企業活動の目的は「人間」の豊かさ、「人間」の幸せに行き着くべきだと思っていて。最近ではデバイスやテクノロジーの発達もあってか、目的がポーンと抜け落ちた状態で、手段の議論ばかりが進んでいるように感じられることが多々あります。


国見昭仁 電通ビジネスデザインスクエア エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター

自分で作れないから、代わりに作ってもらった野菜を買う。自分で料理をする時間がないから、代わりにレストランで作ってもらう──世の中のあらゆる仕事は、こうした何らかの“代理”で成立しています。誰かの代理である以上、その行為の目的が「人間」であることは揺るぎないんです。

大企業は損得軸、小さな組織は「好き嫌い軸」

──いま、日本各地に埋もれているスモール・ジャイアンツの経営者に激励のメッセージを送るとしたら、どんな言葉を投げかけますか?

山井:小さい会社組織にしかできないことは、いろいろあると思います。そのひとつが「“好き”を仕事にすること」です。

大きい組織はどうしても「こっちの方が◯億もうかる」「それは採算性が見込めない」といった損得軸で動かざるを得ない側面があります。一方で、小さい組織なら好き嫌いの軸で、「これは世の中に新しい価値を生み出せる」といった判断で事業を起こせる。それがうまくいけば、結果的に収益にも繋がります。

──損得よりも他の判断軸を優先できることが小さい組織の優位点、というわけですね。

国見:僕は、その「損得よりも優先するもの」が「ロマン」であってほしいなと思います。大企業ではなかなか難しいからこそ、小さい会社で働くならばロマンを追わなきゃ、もったいないじゃないですか。

以前、打ち合わせをしていたときに「山井さんの経営って、ロマン何パーセントですか?」って聞いたことがあって。そしたら山井さん、「90パーセント」と仰ったんですよ。

山井:ほかの人たちはどれくらいなの?

国見:さまざまな経営者に聞いてきましたけど、20〜30パーセントと答える人がほとんどでした。山井さんがぶっちぎりのトップです(笑)

──ロマンが90パーセントだとすると、残りの10パーセントは一体何なのでしょうか?

山井:そこが僕のまだまだ至らない点ですね。10パーセント不純物が混ざっている(笑)

──なるほど、ロマン100パーセントが理想だと。

山井:個人的に、経営は状況論だと思っています。これから先、AIや人工知能がどんどん世の中に入り込んでくると、単純作業はオートメーション化して、人間は創造的なことをやるしかない状況になってくる。そうなると、「私は好きなことをやります、ロマンを追います」と振り切った方が、そこに新しい会社ができて、利益が上がる可能性は高いはずです。

スモールジャイアンツ各賞・大賞は、Forbes JAPAN2月24日発売号に掲載します。



山井太◎スノーピーク 代表取締役社長。1959年新潟県生まれ。明治大学卒業後、外資系商社を経て、1986年ヤマコウ(現・スノーピーク)に入社。キャンプ事業を立ち上げて革新的な製品を開発し、事業を急成長させた。1996年代表取締役社長に就任。自身も熱心なアウトドア愛好家で、年間30〜60泊以上をキャンプで過ごす。新潟県三条市の本社は5万坪のキャンプ場の中にある。

国見昭仁◎電通ビジネスデザインスクエア エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター。1996年に第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行。法人向け融資業務を担当した後、アサツーディ・ケイを経て、2004年に電通入社。2010年、経営者と向き合い、企業のあらゆる活動を“アイデア”で活性化させる「未来創造グループ」を立ちあげる。2015年よりエグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターに就任。2017年、未来創造グループを拡張し、ビジネスデザインの専門組織「電通ビジネスデザインスクエア」を立ちあげる。車、化粧品、家電、通信、アパレル、旅行、通販、外食、流通など様々な業界において、経営、人事、事業、チャネルなど広範囲におけるプロジェクトを多数手がける。

構成=西山武志 写真=井上陽子

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