ビジネス

2018.02.23

日本が誇る小さな大企業「スモール・ジャイアンツ」大賞を決定!

山井太 スノーピーク代表取締役社長(右)と国見昭仁 電通ビジネスデザインスクエア エグゼクティブ・クリエーティブ・ディレクター


国見:僕も趣味で20年近くキャンプをやっていますが、山井さんと知り合う前からスノーピークの製品は愛用していました。他社製品に比べて圧倒的に品質が良い。でも、最初のイベントではユーザーに散々「値段が高い」って言われたんですよね?

山井:「メチャクチャ高い、考えられない!」とか言われました(笑)。我々は「価格設定は高いけれども、それ以上に価値のある製品を提供している」という自負を持っていて、ユーザーもその価値をわかって買ってくださっていると思っていたんですが……。当時はそうでもなかったんです。

──2000年のシーズン以降、スノーピークではそれまでより安価な製品を出しつつも、さらにハイエンドな製品のバリエーションも増やしています。ハイエンドな製品が受け入れられるためには、ユーザーに「その製品の価値を理解してもらうこと」が不可欠だと思いますが、その点はどのようにフォローしていったのでしょうか?

山井:ユーザーへのプレゼンテーションの機会を増やし、その質を上げていきました。例えば、弊社では分厚いカタログを作っていて、そこでは「なぜその商品をつくったのか」という背景の部分まで言及しています。また、初回の開催以降も「スノーピークウェイ」は毎年行っていて、そこでユーザーと直接語り合うことも、商品や弊社自体への理解に繋がっていると思います。


山井太 スノーピーク代表取締役社長

国見:スノーピーカーには、独特の文化が生まれているように感じますね。アウトドアのリテラシーが高くて、「次はどんな製品を出してくるんだろう」と情報に飢えている。

──ユーザーと共に「質にこだわる」という文化を作り上げていった、とも言えそうです。

山井:そうですね。価格の選択権は常にユーザー側にありますから、我々が「良い、使いたい」と思って作った製品を、ユーザーの皆さんにも同じように感じてもらうためには、根気強く説明し続けることが大事です。

「そのビジョンに社会的意義はあるか?」

──スモール・ジャイアンツのようなタイプの企業から経営のアドバイスを請われる機会も多いと聞いています。その際、どんなアドバイスをされますか?

山井:ケースにもよりますが、まずは「ぶれない、分かりやすい企業理念はありますか?」と聞きますね。特に若い起業家の方だと、すごい技術や企みをもっていたりするのですが、それが理念に落とし込まれていないことが多いんです。明確なビジョンがあるなら、もっとシンプルな文章で伝えたらいいじゃないかと。

それと合わせて大事なのが、「そのビジョンに社会的意義はあるか?」ということ。

国見:スノーピークの魅力は、まさにそこにあると思っています。存在意義が明確で、圧倒的なんです。彼らが、そして山井さんが社会に何をもたらしたいのか、どのように世界をハッピーにしていくのかが、少し話しただけでもビシビシ伝わってくるんですよね。

スノーピークは素晴らしいプロダクトをたくさんつくっていますが、それは「人間を豊かにする」ための手段でしかない。むしろ山井さんは「人間を豊かにする」という目的についてしか、考えてない。そこが最初に会ったときからずっと変わらないから、「この人だったら絶対に世の中を幸せにするな」と本気で思えるんです。
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構成=西山武志 写真=井上陽子

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