トランプ現象やブレグジットといったグローバリゼーションに反対する動きが世界を“分断”するいま、異文化理解力が果たす意義とは何か。これからのグローバル企業に勤めるビジネスパーソンにはどんな役割が求められるのか。3月16日に開催される「Sansan Innovation Project 働き方2020」に登壇するメイヤーに訊いた。
──エリンさんが『異文化理解力』を書かれた2014年から、世界の状況は大きく変わってきています。トランプ現象やブレグジットといった動きをどのように見ていますか?
たしかにトランプやブレグジットはアンチ・グローバリゼーションと呼べるものです。とはいえ、グローバル化を止めることは誰にもできません。政治家がなんと言おうと、日々、ますます多くの企業が世界のほかの国々とともに働くようになっています。
私自身、本を出してから驚いたことがあります。普通、本は出版されて時間が経てば経つほど売上は下がるものですが、『異文化理解力』は出版されてから2年、3年と時間が経つほど多く売れているのです。これはまさにいま、グローバリゼーションが進んでいる最中だからだと思います。
──そうした流れに日本は乗り遅れているのではないか、と個人的には懸念を感じています。日本がグローバル時代により適応していくためには何が必要だとお考えですか?
単一の文化をもつ日本では、グローバル化を進めていくのは特に難しいことだと思います。ほかの国ではたとえ旅をしなくとも海外から人や文化がやってきて、よくも悪くもその国の文化を希釈してしまいますから。
世界の国々とともに働くための最初のステップは、自分たちの文化がいかにほかの国の文化と異なっているかを理解することです。日本人は独自の文化をもっていると言いましたが、だからこそ一度それが「日本だけのもの」ということに気がつけば、ほかの国のやり方があるということを理解するのも早いでしょう。
日本の文化を変える必要はない、と私は考えています。もし子供たちに早い段階から、日本での働き方と海外の人々との働き方の違いを教えることができれば、彼らは日本と世界をつなぐ「橋」になれるはずです。
──まずは自分たちの国のカルチャーやアイデンティティを見つめることが重要である、と。
はい、そしてアイデンティティを考えるうえでは、どの部分が自国の文化から来るもので、どの部分が個人の特性から来るものかを理解することも重要です。その違いを理解することで、海外で働く際にはどの部分を適応させればいいかがわかりやすくなりますから。
とはいえ、日本の若い世代と一緒に働くと、彼らはすでに世界で働くことに対してより準備ができているように感じます。INSEADで教えている経験から言っても、日本の学生は年々インターナショナルなスタイルに適応していると思います。