商品は値上げ
小売業に関するデータを提供するEDITEDの分析によれば、H&Mの商品は2014年末~17年末までの間に、主要カテゴリーのプライス・ポイントが平均23.90ドル(約2600円)から27.04ドルに上昇していた。女性向けのジーンズの平均価格は15%、Tシャツは25%値上がりした。一方、ザラの平均価格は同じ期間に、ジーンズが7.5%、Tシャツが21%安くなっている。
「カプセルコレクション」も時代遅れ
H&Mが2004年にカール・ラガーフェルドとのコラボレーションによるカプセルコレクションを発表したときには、商品は数分のうちに完売したという。ファストファッションの中では早い時期からKenzoやアレキサンダー・ワンなどのトップデザイナーといくつものカプセルコレクションを発表してきた同社だが、英アーデム(ERDEM)とのコラボにより昨年11月に発売した最新のコレクションは、以前のほど注目を集めなかった。
ショッピングモール戦略の失敗
商業用不動産サービスを提供する米ジョーンズラングラサール(JLL)によれば、H&Mは2000年に米市場に進出した後、ほぼ見境なく店舗網を拡大してきた。現在、店舗は80%以上がショッピングモールに集中。モール内にある536店舗が、同様に業績不振にあえぐその他のブランドと対決している。
ブルームバーグが報じたところによれば、同社は現在の戦略に結果が伴わないことを受け、新たに390店舗を開設する一方、既存の170店舗を閉鎖する計画だという。縮小規模は同社にとって、1998年以降で最大となる。
課題の克服が急務
H&Mを運営するヘネス・アンド・マウリッツは、注意散漫になっているのかもしれない。新商品の提供や新店舗の開設などよりも、まずは旗艦店やブランドそのものが陥っている混乱状態を解消しなくてはならない。
前出のダートは、「スウェットシャツに(ジャングルで最もかっこいい)“サル” という人種差別的な言葉を入れてしまった最近の同社の失態は、重大な問題を抱える組織にとっての(問題の)原因ではなく症状だ。当然ながら、この一見で否定的な報道が続いたことは、課題の克服をさらに難しくしている」と述べている。