世界の偉人に学ぶ「言葉の力」 変化を起こす話術とは

Photo by Keystone-France/Gamma-Keystone via Getty Images

映画『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』が話題を呼び続けている。

ナチス・ドイツに対抗するため英国人を結束させたチャーチル元英首相を演じたゲイリー・オールドマンは、ゴールデン・グローブ賞や放送映画批評家協会賞の両方でドラマ部門主演男優賞を受賞した。

製作元のフォーカス・フィーチャーズ(Focus Features)は先日、同作に絡め、人々の心を動かす力強い言葉で運動を巻き起こし、変革をもたらした世界の指導者たちを紹介した短編映像を公開した。

こうした映像に必ず登場するのが、マーティン・ルーサー・キング牧師だ。映像では彼のこんな言葉が紹介されている。「ある場所での不正義は、あらゆる場所での正義に対する脅威だ」

これはキングが1963年4月、アラバマ州バーミングハムで公民権運動の抗議活動を率い逮捕された際に記した「バーミングハム刑務所からの手紙」からの一文だ。この手紙は、彼の類まれなる言葉の力を示している。

この一文が現在まで語り継がれている理由の一つは、その構造にある。この文は、対立する概念を並行して配置する「対句法」を用いている。キングは、言葉の響きと構造を利用して自分の考えを広める方法を熟知していた。

キングの天才的な言葉の力は、20世紀を代表する演説の一つである「私には夢がある」スピーチで存分に発揮されている。驚くことに、キングはこのフレーズを即興で使った。この言葉は、報道機関に配布された原稿には含まれていなかった。

このような離れ業をやってのけるに必要なスキルを考えてみてほしい。ジョージ・ワシントンの退任演説やエーブラハム・リンカーンのゲティズバーグ演説、チャーチルの「私たちは戦う」演説、ジョン・F・ケネディの大統領就任演説など、有名な演説の多くは、原稿を徹底的に推敲(すいこう)したものだ。

キングは、真に並外れた偉業を成し遂げた。彼は、語りかける聴衆の感情を理解していた。25万人の聴衆を前に原稿から外れて、より少ない聴衆を相手に試したことのあるアイデアを実行すると決め、完璧にそれをこなした。
次ページ > 偉大なリーダーは言葉を学ぶ

編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事