また、当初2017年中に発表されると言われていたプライベートブランド「ZOZO」についても、この原稿を書いている2018年1月上旬現在ではベールに包まれたままである。ボディースーツの想定以上の注文と反響の大きさから、現在スタートトゥデイ社内では対応にてんてこ舞い状態なのであろう。
ユニクロの国内シェアが拡大する?
アパレル市場は、価格帯によりラグジュアリー、トレンド、マスボリューム市場の3つに分けてみることができる。
このボディースーツと「ZOZO」はマスボリューム市場での展開が予想されるため、リリース当初よりZOZO対ユニクロ、スタートトゥデイのユニクロへの挑戦というような論評を多く見かけた。中には、ユニクロのシェアをスタートトゥデイが奪うのではないかという意見も見受けられたが、果たしてこの見方は正しいのだろうか。
結論から述べると、筆者の見方では、スタートトゥデイの取組はユニクロに対してネガティブというよりは、むしろポジティブに働く可能性があると見ている。より具体的に言うと、間接的にユニクロの国内シェア拡大に繋がるかもしれないということだ。理由を説明しよう。
ユニクロの2017年8月期の国内売上は約8100億円である。前期の2016年8月期と比較すると+1.4%であり、国内ではほぼ頭打ちとなっているように見える。
一方シェアベースとみると、国内のアパレル市場約9.2兆円のうちユニクロは約9%のシェアであり、一見まだ上昇の余地があるように見える。ただし、ユニクロが位置するマスボリューム市場は約5.5兆円であり、この中では約15%のシェアに達している。実はこれらのシェアの数値は、グローバルでみると高い水準にある。
アパレル市場は元来フラグメント(一社で大きくシェアをとるのが難しく、様々なプレイヤーにより市場が構成されていること)であり、弊社の調べでは一国の中でZARA、H&MやユニクロのようなグローバルSPAが占めるシェアは、複数ブランドをあわせたトータルでも市場の約15~20%で頭打ちとなることが多い。
国内のユニクロの場合、この中で既に9%を獲得しており、伸びしろが十分にあるとは言い難い状況だ。消費者の目線で説明すると、ヒートテックなど人から見えにくいアイテムは良いが、ウルトラライトダウンのように分り易いアウターを着ると、街中ですぐ人とかぶってしまうという状況にある。このように単一ブランドで大きくシェアを獲ることはアパレル業界では元来難しいのだ。
しかしながら、スタートトゥデイ、ZOZOによるマスカスタマイゼーションの浸透はゲームのルールを変える可能性がある。