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2017.04.09

ユニクロ柳井社長が語る「データ活用とアパレル産業の未来」

ファーストリテイリングの柳井正会長兼社長(gettyimages)

ファーストリテイリングは5年前、全米で200店舗のユニクロを展開するという野心的な目標を掲げたが、軽量ダウンジャケットやオックスフォードシャツは想定したほど人気が出ず、苦戦を強いられている。

同社はこれまでに6店舗を閉鎖し、現在の米国での店舗数は47店舗と目標に遠く及ばない。同社は、今後の出店目標を明らかにしていない。

しかし、ファーストリテイリングの創業者で会長兼社長の柳井正はグローバル展開を諦めていない。柳井は3月下旬にニューヨークで秋冬コレクションを発表した際、フォーブスアジアに対し「2020年までに売上高を現状の170億ドル(約1兆8000億円)から290億ドル(約3兆2000億円)まで増やす」と語った。彼は、中国やタイなどアジア市場の成長に期待しているという。

柳井はかつて、2020年までに売上高500億ドルを達成し、アパレル業界で世界最大の小売企業になることを目指していたが、その実現は困難な状況だ。現在、ファーストリテイリングは世界3位で、1位はZARAの親会社であるインディテックス(2016年売上高250億ドル)、2位はH&M(2016年売上高220億ドル)となっている。

「これからはデジタルイノベーションに成功した企業が勝者になる。我々は、情報化とデジタル化に積極的に取り組んでいる」と柳井は話す。現在、ファーストリテイリングのEC売上比率は5%だが、柳井は30%まで引き上げたいと考えている。アメリカでは20%と他市場よりも高くなっている。

全世界の小売り市場におけるEC化率が7%であるのに対し、インディテックスとH&Mは推計10%と平均を大きく上回る。柳井は自社のEC事業に不満を抱いており、より高品質で強度の高い素材の開発が業績向上の鍵だと考えている。

ファーストリテイリングは、R&Dセンターを3か所新設し、繊維科学の専門家がより履き心地の快適な未加工デニムや、3Dプリンターを使ったカシミヤや羊毛のニットの開発を行っている。

データの活用こそがアパレルの未来だ

同社としては、これらのテクノロジーをヒートテック(2003年にリリース)やウルトラライトダウン(2009年にリリース)、エアリズム(2013年にリリース)に続く新たな柱に育てたい考えだ。

ファーストリテイリングは、AIを活用して顧客の購買情報を分析し、新たなデザインの開発を行っている。これは、ネットフリックスがAIを使って加入者に映画をレコメンドするのと似ている。

柳井はまた、自社工場から直消費者に商品を配送する物流体制を数年以内に構築したいとしている。「今後は、入手したデータを迅速に商品に落とし込む動きを加速させていく。それこそが我々をゲームの勝利に導くことになる」と柳井は述べた。

編集=上田裕資

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