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シネマの女は最後に微笑む

映画『サンドラの週末』で主演を務めたマリオン・コティヤール (Getty Images)

新しい年を迎えて私たちが思うのは、「今年も無事に過ごせますように」ということだ。「無事」は自分や家族の健康から仕事や人間関係などさまざまだが、多くの人が気になるのは雇用及び生活の安定だろう。

日本は失業率は下がり、景気拡大が続いていると言われる。有効求人倍率は昨年、バブル期のピークを越えて1.5倍台に乗った。しかし、生活に余裕が出てきたという声はあまり聞かれない。名目賃金の上昇率に対して、物価はそれ以上に上昇しているからだ。また近年では、契約期間の短い臨時労働者の求人も多くなってきているという。

世界に目を向けると、この10年間で世界全体の富は27%増大したが、貧富の格差はいっそう広がったとする報告がある。一握りの富裕層を除いて、誰も彼もが生活の防衛に汲々としなければならない状況は、この先もずっと続きそうだ。

さて、今回紹介するのは、ベルギー・フランス・イタリア合作の2014年の作品『サンドラの週末』(ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ監督)。雇用者と被雇用者、雇用者同士のぬきさしならない関係性の中に、現代の庶民の切実な生活感を浮かび上がらせた佳作である。

ソーラーパネルの工場で働くサンドラ(マリオン・コティヤール )は、夫と二人の子どもと四人暮らし。うつ病の治療で休職していたが、やっと職場に戻れることになった。

ところがその直前の金曜日、社長がサンドラの同僚たちに対し「サンドラの復職か、ボーナス1000ユーロ(日本円で12万円弱)か」を投票で選ばせ、16人中14人がボーナスを希望したので自分はクビになるという話を聞く。

ショックを受けて直ったはずのうつがぶり返し、どっと意気消沈してしまうサンドラ。共働きでなければ家計を維持していくことは難しい。

会社に駆けつけ、味方の同僚の助けを得てやっと「月曜の再投票で過半数を取れたら復職」という社長の約束を取り付ける。この土日で、14人のボーナス派の同僚たちの家を訪問し説得して回るという、思いがけない苦行が始まったのだった。

「仕事を続けたい。だから私に投票して。もちろん誰だって1000ユーロは欲しい。でも選ぶように強制したのは私じゃない」

一従業員に過ぎない自分ではなくボーナスの方に投票した同僚たちに、こんなふうに直接訴えるのはなかなかハードルが高い。訴えられた方も、居心地悪いだろう。一人一人に会っていく中で、皆、それぞれに切実な生活事情があることがわかってくる。

妻が失職して子どもの学資のやりくりが大変な者。離婚したばかりで再スタートを切るのにお金が必要と言う者。「君が残れてボーナスが出ればいいが」と口ごもる者。どの人も、経済的に余裕がある暮らしには見えないところにリアリティがある。

その上、仲の良かった同僚には居留守を使われて、サンドラは増々落ち込む。

文=大野左紀子

 

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