ビジネス

2017.12.22 08:00

セクハラ問題で苦境の米著名シェフに見る「企業と醜聞」の関係

マリオ・バターリ(Photo by Stefanie Keenan / Getty Images for Eataly)

複数の女性からセクハラ被害を訴えられ、過去の行いを認めて謝罪した米国の著名シェフ、マリオ・バターリは、このスキャンダルを一刻も早く過去のものにしたいと思っているようだ。だが、その考えを明らかにするのは、時期尚早だった。

食やレストランに関する情報を提供する「イーター(Eater)」が12月11日、バターリからセクハラを受けたとする複数の女性の訴えを掲載したことを受け、バターリは16日までに、自身が発行しているニュースレターに購読者充ての謝罪文を投稿。過去の行動をわびた。

だが、バターリは深く悔いていることを示すような文面の後に、(画像付きで)こう付け加えた。

「PS、休日らしい朝食のメニューを探しているあなたのために。あるファンの方のお気に入り、ピザ生地を使ったシナモンロールです」

そして週が明け、何が起きたかといえば、ご想像のとおりだ。インターネット上に、バターリのファンは一人もいなかった。空気が読めていないバターリの「先へ進もう」とする試みは、明らかに裏目に出た。ツイッターでも数々のフード関連のブログでも、多くの人たちからの酷評が相次いでいる。

「なかったことに」したい理由

バターリがこのスキャンダルを過去のものにしたい理由は分かる。約2500万ドル(約28億2400万円)と推測される個人資産をもたらした彼のビジネス帝国に、影響が及んでいるのだ。

出演していた米ABCテレビの食がテーマの番組は、すでに降板が決まった。そして、小売業大手ターゲットとバターリが米国市場への進出を支援したイタリアの高級スーパー 「イータリー(Eataly)」は、バターリのオリジナル商品やレシピ本の取り扱いを中止した。

バターリは明らかに、自分自身だけでなく経営するレストランやホスピタリティ関連の企業で働く1000人以上の従業員たちが、多くの危機に直面していることを認識している。スキャンダルが実際に企業の幹部個人だけでなく、従業員たちに大きな傷をつける可能性があり、世間の関心が薄れた後もその影響が続くことは、これまでに明確に示されている。
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編集=木内涼子

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