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エルサレムをイスラエルの首都と承認宣言するトランプ大統領(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

ロバート・デニーロとダスティン・ホフマンが出演している「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」(1997年)という映画をご存じだろうか。現職の米大統領がセックス・スキャンダルから国民の目をそらすため、架空の戦争をでっち上げ、自らの正当性を嘘で塗り固めていく内容だ。

最近、米国のトランプ大統領がエルサレムをイスラエルの「首都」と正式に認め、中東がひっくり返るような騒ぎになっている。この問題は、前出の映画と同じ文脈で捉えると分かりやすいかもしれない。

トランプ大統領の決断は、中東和平への戦略的な関与ではなく、ロシアがトランプ陣営と共謀して2016年の大統領選に介入した疑惑の追及が迫るなか、最低支持率の更新などの局面打開を狙ったものだからだ。このトランプ大統領の「自分ファースト」によって、米国は北朝鮮の核危機と併せ、過激派の憎悪への対応という二正面作戦を強いられる。そうなれば安全保障で米国に身を委ねる日本にとっても対岸の火事ではない。

エルサレムは、ユダヤ、イスラム、キリストの3宗教の聖地だ。イスラエルは48年の第1次中東戦争で西エルサレムを獲得し、67年の第3次中東戦争で東エルサレムも占領し、エルサレム全域を「永久不可分の首都」として実効支配してきた。一方のパレスチナ側も東エルサレムを首都とする国家樹立を悲願としており、国際社会はこれまで「エルサレムの帰属」については「イスラエルとパレスチナの交渉で解決すべき問題」との立場を堅持してきた。

トランプ大統領の一方的な現状変更による危険性は、イスラエル市民が「首都承認」に諸手を挙げて歓迎していないことからもうかがえる。パレスチナ自治区ガザを実効支配してきたイスラム原理主義組織ハマスも、新たなインティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)を呼び掛け、各地でデモ隊とイスラエル軍が衝突するなど情勢は予断を許さない。

最も懸念されるのは、こうした混沌が「過激思想への贈り物」(モゲリーニ欧州連合=EU=外交安全保障上級代表)となり、大規模テロを誘発することだ。パレスチナ問題の不当性を説き、メンバーを勧誘するのは、過激派組織「イスラム国(IS)」やアルカイダといったテロ組織の常套手段だ。「過激派は憎悪をかき立て、扇動する」(UAE高官)ため、テロの標的となっている欧州の指導者たちはトランプ政権の方針をこぞって非難している。

このような状況の中で、安倍政権は「大きな関心を持って動向を注視したい」(菅義偉官房長官)とし、安倍晋三首相は自らの言葉でトランプ大統領による「首都認定」の是非を明確にしていない。

文=水本達也

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