所有する住居や別荘を宿として提供することで、貸主は空き家を資産として活用することができます。旅行者はホテルよりも安く滞在できることから、民泊サービスは日本でも着実に利用者を獲得しています。法整備が追いつかず、グレーゾーンとして扱われてきましたが、2017年6月「住宅宿泊事業法(民泊新法)」が成立。施行後は年間上限180日/登録制で提供されることになります。
これからますます私たちにとって身近になるであろうこのサービス名と並んで、彼らを象徴するものがあります。「Bélo」と呼ばれるエアビーアンドビーのブランドロゴです。
「旅行サービス」と聞いて、思い浮かぶのはどのようなロゴでしょうか? 宿泊を連想させる家やベッド? 旅を連想させる飛行機?
しかし、彼らのシンボルにそのような要素は見当たりません。「Bélo」は、人々・場所・愛、そして、“airbnb”という4つの要素で構成されています。
これらは、サービスから連想できるキーワードではありません。では、どのようにしてこのロゴは誕生したのでしょうか。このロゴを考察する上で、重要になるのが「思想」です。
エアビーアンドビーは自身の存在意義を、単に寝床を探す場所ではなく、所属する「家」を探す場所だと定義しました。同サービスには異なる国、異なる文化、異なる背景を持つ人々が集まっています。しかし、皆がそれぞれの物語を持ち、つながり、共有することで、世界中どこにいても、どこかに属すること(belonging)ができる。そんな彼らの思想が反映されたのが同社のロゴです。
このように、思想という目では見にくい存在を、ロゴのように私たちが触れる存在へと変換する作業が「CIデザイン」の大きな役割のひとつだと考えています。この連載では、前半はCIの概論や重要要素について、後半では今この時代のCIの重要性について、事例を交えながらお話していきます。
ブランドの土台「CIデザイン」
CIとは「コーポレート・アイデンティティ(Corporate Identity)」の略で、「マインド・アイデンティティ(MI) 」「ビヘイビア・アイデンティティ(BI)」「ビジュアル・アイデンティティ(VI)」の3つの要素で構成されています。
MI : 企業や組織が社会に対してどのような存在でありたいかを定義する。「すべてのアスリートにひらめきと革新をもたらす(身体があれば誰もがアスリート)」(ナイキ)、「21世紀を代表する会社を創る」(サイバーエージェント)のように経営理念やビジョン、ミッションへと変換されることが多い。
BI : どのような振る舞いを取るか、行動を定義する。たとえばアップルのストアは、スタッフの和気あいあいとした雰囲気から生まれる。身ぶりや言葉づかいによって “ブランドらしさ” を規定する。
VI : 統一的外観を定義する。ロゴ (シンボルマークとロゴタイプ) やトーン&マナー、ビジュアル/グラフィックなど、あらゆる “見た目のデザイン” (狭義のデザイン)の設計が含まれる。